Customer Logins
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Customer Logins導入事例 – 三菱重工業株式会社
日本の航空・宇宙産業のリーダーとして最新鋭の航空機や宇宙機器を製作している三菱重工業株式会社 名古屋航空宇宙システム製作所(以下、名航)では、IHS Markitの工業規格オンラインデータベースサービス「Engineering Workbench」を導入活用しています。技術情報の管理部署、及びヘリコプタ・航空機設計部署のエンジニアにご協力いただき、効果や評価について詳しく伺いました。
名航の概要と各々の業務について
三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所の概要についてお聞かせください。
名航は、1920年に三菱内燃機製造株式会社名古屋工場として発足し、日本の航空宇宙産業の中心地である中部地区に三つの工場(大江・飛島・小牧南)を擁しています。2004~2007年度の平均売上は、2700億円です。主要な製品は、戦闘機・ヘリコプタ・民間輸送機・宇宙機器等で、これらの製品分野において国内屈指の実績を持っております。
情報・技術管理部・航空機技術部・ヘリコプタ技術部の業務について教えてください。
F-15J戦闘機情報・技術管理部では、名航技術部門における全般管理、設計・開発・製造業務で必要とする様々な「技術情報」の管理、事務・生産・技術システムに係るシステム開発等を行う部門です。
公知規格文献の配信サービスである「Engineering Workbench」も当部の管轄となり、現在は名航内のほぼ全ての設計・開発・製造部門で利用されています。
航空機技術部では、主に防衛省向けの航空機(戦闘機等)を設計している部門で、空力設計、構造設計、装備設計等の航空機に係わるあらゆる分野の設計を行っています。
SH-60K哨戒ヘリコプタヘリコプタ技術部では、主に防衛省向けのヘリコプタを開発・設計している部門で、空力設計、構造設計、装備設計等ヘリコプタに係わるあらゆる分野の開発・設計を行っています。
基礎設計課は製品企画の技術部門の一番上流部門にあたり技術分野で申しますと空力・操縦安定性・荷重等の設計/検討を担当しています。 また,電子装備設計課は,車で例えるとカーナビ,速度計,エンジン回転数計,無線などに相当する機器類を組み合わせインテグレーションするシステム設計と,これらの機器を実際のヘリコプタに取り付けるための装備設計を行っています。
社内ポータルから工業規格データベース「Engineering Workbench」へ連動
IHS Markitの工業規格データベースサービスをいつ頃からどのように活用されていますか。
IHS Markitの工業規格データベースについては、現在のようなデジタルデータになる以前から利用しており、当時はマイクロフィルムや紙の時代でした。
4~5年前より社内ポータルシステムの一環に、「Engineering Workbench」を組み込み、オンラインで活用しています。大まかには以下のようなシステムです。
- 社内のネットワークシステムの中に規格などの情報ポータルがある。
- 各自のPC端末から情報ポータルへアクセス。
- 情報ポータルサイトから工業規格データベース「IHS Markit Standards Expert」へ自動ログイン。
- スペック番号からミルスペック他、必要な規格を検索し原文がPDFで画面に表示される。
航空機産業界においてミルスペックは必要不可欠
具体的には、どのように「Engineering Workbench」を使用されているのですか。
航空機技術部とヘリコプタ技術部では、主にミルスペックとそれに関連する工業規格を閲覧しています。航空機産業界において、ミルスペックは大きな基準です。設計にあたっては、まず規格に何が書かれているか理解した上で設計をします。次に、設計してカタチの見えてきたものが規格に適合しているかどうか確認をします。規格だけでなく背景あるいは適合性の証明の仕方についても適宜参照しています。このように航空機の設計や適合確認作業において、ミルスペックは必要不可欠な規格です。「Engineering Workbench」は、規格番号やキーワードなどでの検索機能が充実していて重宝しています。
「オンライン化で本来するべき作業に時間が費やせる」
デジタルデータ以前は、どのような方法で閲覧されていたのでしょうか。
昔は、紙ベースで規格の閲覧参照を行っていました。本棚に並ぶ膨大な量の資料から、必要な情報を見つけ出して参照するわけですから、どんな情報が必要なのか、また本棚のどこに資料が入っているかを知らないと仕事になりませんでした。当時は、ミルスペックの何番に何が書いてあるかを知っていると一人前などと言われたものでした。
次のマイクロフィルムの頃は、図書室など別の場所にある専用端末での閲覧でした。他の人が、端末を使用していると自分の席へ戻らなくてはなりませんでしたが、こうした苦労や、時間がかかる作業も決して悪いことばかりではなかったと思います。苦労して得た情報はより深く理解できていたような気がしますし、歩いて戻る途中に新しいアイデアが閃くなども稀にありました。ただ、情報入手までの時間は何倍も掛かっていましたが・・・。
現在は自分の席のPCに向かって、スペック番号やキーワードを入力すれば必要としている情報が簡単に入手できます。離れた場所へ資料を探しに行かなくても、自分の机で閲覧が可能になったことはやはり大きい。本来するべき作業に時間が費やせるということですから。作業時間だけではなく作業工数の削減にもつながり費用対効果もあるといえるのではないでしょうか。
そもそも航空機はどのように製作されるのか
そもそも航空機は、どのように製作されるのでしょうか。
航空機の製造は経済産業省の定めている航空機製造事業法に基づいており、航空機の生産を行えるのは認可されている企業のみです。
現在の航空機づくりにおいては共同開発・生産が主流です。これは、部品から全てを自社で調達するのは無理だからです。世界的トップ企業であるボーイング社やエアバス社でも同じことがいえます。このようなことから、名航でもボーイング社の次世代旅客機の主翼部分を開発・生産しています。
かなり簡略な生産手順ですが、航空機は概念設計(具現化)→細部設計(図面)→製造という段階を経て作られます。一つ一つを見るとかなり長いスパンです。
航空機はモデル数が少なく定形化されていないのが現状です。わかりやすく自動車と比べていうと、毎年新型モデルがでるような自動車と違い、戦闘機などでは 十数年に一機種ということもあります。そのため毎回の開発は、モデルチェンジといったレベルではなく、カテゴリ自体が新しいものづくりとなり、《今回はガソリン車》、《次は燃料電池車》などというイメージです。軍用機においては市販品を売っているわけではないので、まずは顧客である防衛省からの要望を聞いてから設計をはじめる受注設計のような形をとります。
また生産後には国土交通省の型式証明(法律)を取得することになります。
現在当社のグループ会社である三菱航空機(株)で開発中のMRJについても今後型式証明を取得しなければなりません。
「Engineering Workbench」の評価
長年に渡って「Engineering Workbench」をお使いいただいています。評価をお聞かせください。
実際に利用しているうえで、「旧版(Historical)情報が充実している」、「単一の情報ソースでみられる」、「更新情報のメール通知」の三点について好印象を持っています。
旧版(Historical)情報が充実している」について
ミルスペックの旧版(キャンセル版や修正版を含む)が米国国防総省よりも豊富にあります。
航空機は耐用年数が長く、必ずしも最新版のみが必要ではありません。具体的には、当社が防衛庁(当時)との契約で開発した対潜システムを搭載したSH-60Jヘリコプタ(海上自衛隊向け)は、1987年に初飛行したものですから、そのメンテナンスや改修には、その年代やそれ以前の規格を見ることも必要です。また、旧版から最新版までを見ることにより、当時の背景、なぜ数値が変わったのかということを理解できるようになります。
「単一の情報ソースでみられる」について
導入以前は民間の規格と米国政府機関の規格は別々の情報ソースになっていましたので、ユーザーが必要としている情報の場所がわからず、窓口である情報・技術管理部への問い合わせも多くありました。「Engineering Workbench」は、ミルスペックのほか世界の様々な国の工業規格など、複数の情報ソースを単一に集約し提供しているのでとても便利です。
「更新情報のメール通知」について
契約している工業規格などが改訂されるとメールで通知されます。改訂に後から気づいて仕様変更をするのは業務の効率化の妨げになりますので、それを回避するための有効な機能です。
「Engineering Workbench」はどんな会社に向いているか
「Engineering Workbench」は、どんな会社に向いていると思いますか。
航空機産業等、多種多様な規格を必要とし部署の場所が点在しているような会社に向いていると考えます。ユーザーは場所移動せず各自のパソコンから迅速に必要な情報を入手でき業務効率化が図れるからです。
工業規格とコンプライアンス(法令遵守)について
工業規格などの著作物の利用に関するコンプライアンス(法令遵守)について、どのように取り組まれていますか。
当社のCSR(企業の社会的責任)指針において、理念を踏まえて事業活動を行うというのがあります。社員は「法令や社内規則を遵守して職務を誠実に遂行する」よう務めています。工業規格における著作権のコンプライアンスについては、IHS Markitからの資料を参考にし、情報の二次利用について一覧表にまとめました。これを社内に周知させ、規格情報等の二次利用に制限を設けています。
IHS Markitへの今後の要望・期待
IHS Markitへの今後の要望・期待などあればお聞かせください。
こちらからの問い合わせに対してのレスポンスや対応が良く感謝しております。「Engineering Workbench」では(1)規格改訂の際に改訂箇所や改訂理由の明示、(2)ドキュメントファイル内に注釈やしおりを貼れる機能、(3)一部の古いドキュメントの品質の改善等をご検討頂けるとありがたいです。
あと、管理部門としましては、さらなる利用活性化をはかりたいので、社内での定期的なセミナーなども思案しております。IHS Markitには、様々なサービス製品の機能・性能をさらに改善や進化をしていただき、技術面・製品面・サポート面などあらゆる面で期待しています。今後も倍旧のご支援をいただきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。
– お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ 三菱重工業株式会社 名古屋航空宇宙システム製作所Webサイト(http://www.mhi.co.jp/nasw/)
※ 取材日時 2008年11月