中国が国家開発計画でグリーン水素生産目標を設定

中国がクリーン水素産業の発展に向けた国家計画を発表し、短期生産目標を設定すると同時に、さまざまなセクターでこの低排出燃料の使用量を増やすことを誓約した。

世界最大のGHG排出国である中国は、2030年までのCO2排出量ピーク到達と2060年までのカーボンニュートラル達成を目指しており、SichuanとHebeiを含む一部の省政府が2021年から2025年までの水素開発計画を発表している。

3月23日、中国の最高経済計画立案当局である国家発展改革委員会（NDRC）とエネルギー規制当局である国家能源局（NEA）は、2021年から2035年の間に水素サプライチェーンを構築するための開発計画を発表し、国レベルでは初となる一連の政策指針を提示した。

NDRCのハイエンド技術部門の副所長であるWang Xiang氏は記者会見で、「クリーンで低炭素、低コストの水素生産を実現するシステムを構築することを表明する」と述べた。

計画によれば、中国は2025年までに再生可能エネルギーから年間100,000〜200,000メートルトン（mt）のいわゆるグリーン水素を生産することを目指しており、これによりCO2排出量を年間100〜200万トン削減することができる。これは中国のGHG年間排出量である約140億mtの1％よりはるかに少ない。

Beijingを拠点とする業界団体である中国水素同盟（China Hydrogen Alliance）の統計によると、中国は現在、年間約3,300万mtの水素を生産しており、このほぼすべてが石炭の再ガス化、ガス改質、あるいはさまざまな工業プロセスによるという。生産物は一般的にグレー水素に分類される。

「再生可能エネルギーから水素を生産し、化石燃料からの生産を制限することが焦点だ」とWang氏は言う。「私たちには最大の再生可能エネルギー設備容量があり、クリーンで低炭素の水素供給を増やす大きな可能性を秘めている」

S&P Global Commodity Insightsのデータによると、中国では2021年末から124 MWの電解槽が水素生産の役割を担っているが、これが完全に再生可能エネルギーによるものかどうかは不明だ。その他、1GWの電解能力が2022年と2023年に稼働可能になる予定である。

政府によると、中国の再生可能エネルギー設備容量は2021年末に1.063 TWに達し、今後数年間で急拡大を続けるという。

中国では昨年、再生可能プロジェクトによって2,480 TWhの電力が生成された。これは電力構成の29.8％に相当する。政府の目標は2025年までに非化石燃料のシェアを39％に到達させることである。

ENRのシニアリサーチアナリストであるS＆P GlobalのMegan Jenkinsは、「（グリーン水素生産の）目標レベルを支持するのに十分なプロジェクトがすでにパイプラインにある」と述べているが、需要には不透明感があると付け加えている。

誰が水素を使うのか？

他の数ヵ国と同様、中国は道路交通セクターをグリーン水素の最初の需要源と見なしている。

中央政府はBeijing、Shanghai、Guangdong周辺の水素燃料電池を動力源とする自動車バリューチェーンに補助金を提供するとし、各大都市圏が4年間の実証期間中に、燃料電池車で最大15億円（2億3,500万ドル）、水素供給で最大2億円を受け取る予定だ。

国家水素計画によると、中国は2025年までに5万台の水素燃料電池車を保有することを目標としている。S＆P GlobalのPlatts Analyticsでは、昨年12月時点の水素燃料電池車の保有台数を約7,700台と推定した。

一方でアナリストは、グレー水素よりもグリーン水素を優遇しない現在の補助金制度を改良する必要があるという。グリーン水素生産と自動車需要の中心地を一致させるのも難しい、とJenkinsは言う。「グリーン水素プロジェクトの多くは、人里離れた地域の巨大な再生可能エネルギーメガベースを拠点としている」

政府はその国家計画で、物流インフラの構築を促進し、品質と安全基準を設定し、1日あたり1,000kgを超える水素供給能力を持つ供給ステーションの数を増やす、と説明し、電力貯蔵、公益事業、産業、航空、海運の各セクターでグリーン水素の使用を促進することを予定している。

容量の強化

政府によると、中国には主に沿岸地域に水素サプライチェーンに関与している企業が300社以上ある。政府は今後、業界の技術力を強化し電力コストを削減したいと考えている。

電解槽の国内生産能力は今年、1.5〜2.5 GWに達すると予測されているが、政府は、中国企業が重要材料の開発能力を強化し燃料電池を革新しなければならないと考えており、プロトン交換膜燃料電池を重点領域として強調している。

「海外のより高度な基準と比較して、中国の水素産業は革新する能力を欠いており、技術的能力は精彩を欠いている」と計画は指摘する。「我々はより優れた技術を備えた国や地域との協力を強化する」 「我々は海外のパートナーとともに水素の国際基準確立に積極的に参加し、一帯一路諸国との貿易機会を模索する」と計画は付け加えている。

計画によれば、中国の中央政府は産業を促進し、地方自治体のインフラ計画立案において主導的な役割を果たすために、さらに多くの政策手段を開発するという。工業化が進んだ省では当初は副産物の水素を使用し、再生可能資源が豊富な省ではグリーン水素のパイロットプロジェクトをいくつか開始する、というのが理想的なシナリオだ。

「将来の開発については、すべての地方自治体当局が供給能力と産業インフラを考慮し、スペースを作り出す必要がある」とWang氏は述べている。

中国は2025年以降の水素開発の定量目標をまだ設定していない。計画によれば、ピークCO2目標の2030年までに「比較的包括的なサプライチェーン」を持ち、2035年までに最終エネルギー消費における水素のシェアを「大幅に増やす」ことを望んでいる。

2022年3月23日投稿：Max Tingyao Lin（気候と持続可能性担当プリンシパルジャーナリスト）