コネクティッド・インテリジェント・タイヤ:コネクティッド・モビリティの次なる推進力

2020年7月8日

コネクティッド自動運転電気車(CAEV)、ライドシェアリング、フリート管理など、将来のビジネスモデルの効率はタイヤ性能が影響する。「コネクティッド・インテリジェント・タイヤ(CIT)」はコモディティ化されたソリューションとなるだろう。

自動化され、かつ事故のない運転ビジョンを創造するには、車両の全パーツがインテリジェントでネット接続されている必要がある。コネクティッド・インテリジェント・タイヤ(CIT)は必然的な進化だ。

CITとは?

車両の安全性、快適性、燃料消費を改善するために、圧力、温度、加速、歪みなどの瞬間的な状態を監視するセンサーが埋め込まれたタイヤを意味する。データは無線信号を介して車載電子制御ユニットまたはデータ受信器に転送され、受信器はセンサーのデータを分析してBluetoothや無線信号を介してタイヤの現状態を示す。携帯デバイス(スマートフォンその他のポータブルディスプレイ)、あるいは固定測定端末に表示可能。クラウドサーバーとの接続により、エンドユーザーやフリート管理者がどこからでもタイヤの情報を監視することができる。

CITを自動車の再改革に利用する理由

現在は車輪リムにセンサーを埋め込んでいるが、IHS MarkitのCIT調査によると、フリート事業者は資産管理やフリートおよび燃料効率の向上などにもセンサー使用の利点を認めている。予測メンテナンス、サービス計画、リモート診断に対応し予期せぬサービス停止をサポートできるよう、事後対応型から事前対応型への移行がもたらされるだろう。CIT開発のカギは、必要性から生まれている。代表的な例が電気自動車(EV)で、バッテリーパック重量は電力の瞬間最大トルクと相まってタイヤに大きな影響を与える。その結果、タイヤの摩耗と損傷の割合が高くなる。Audi eTron EVには、タイヤ摩耗の25%増を打ち消すGoodyearのEagle F1 Asymmetric 3スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)タイヤ 265/ 45R21 SUVサイズが搭載された。このインテリジェント・タイヤはeTron SUVのブレーキ性能とハンドリング性能を最適化し、濡れた路面と乾燥した路面の両方で制動距離を短縮することができる。騒音、振動、ハーシュネス(NVH)要件も、バッテリー範囲、牽引力とともに、代替動力源車両向けによりインテリジェントかつ低ローリング抵抗のタイヤ開発につながるだろう。タイヤ摩耗とその定期情報を入手することで、運転体験が大幅に改善され、航続距離不安が軽減される。長期的に見て、コネクティッド、自動運転、ドライバーレス車(大型商用車を含む)は、タイヤのパンク、破裂、トレッド深さの摩耗の影響を受ける。コネクティッド自動運転車(CAV)の基本要件では、移動前、移動中、移動後の人間の介入なしに車両を自動監視する機能が必要になる。従来のタイヤ空気圧監視システム(TPMS)は、車両の負荷や路面状態の監視など、将来のCAVニーズに対応できない。高速運転でパンクした場合、TPMSの反応も遅くなる。これは圧力を上昇させる極度の摩擦熱につながり、その結果、圧力警告が長くなる。こうした制限は、将来の自動運転車フリート事業者の事業運営と収益に大きな影響を与えるため、データ駆動型のタイヤ状態監視は、安全性と運用効率の前提条件となる可能性がある。

CIT技術の今

市場規模

CITとその関連アプリケーションは、主に商用車のフリート管理会社によって推進されている。主要推進要因は大型トラックと長距離トラックだ。乗用車市場は中長期的にさらなる推進力となり、主にEVとCAVが牽引していく。drive-to-go、car2go、UBERなど進歩的なモビリティサービスも採用率にも影響を与える可能性が高い。商用車の車輪センサー組み込みを義務付けているEUのTPMS規制も、規模に対してさらに影響を与える可能性がある。現在、センサー接続されたCIT世界普及率は10%。中長期的には2桁の増加が見込まれている。市場流通の点では、EUのCIT使用率が最も高く、北米が続く。アジア太平洋(APAC)地域の成長は韓国、日本、オーストラリアが主導しているが、中国本土の成長は当面、比較的低い状態が続くだろう。

IHS MarkitのCIT調査では、フリート事業者の使用事例(過負荷の管理や燃料盗難の防止など)が独自の性質を持っているため、APAC市場がこの技術の早期採用地域であることを示している。そのため、成長は中期的に成熟市場からAPACへと急速に移行する。CITの世界的普及率は、2018年から2030年の間に35%に拡大する。

タイヤメーカーの製品レンジ

ContinentalはTPMSセンサーが組み込まれたタイヤ(ContiHybrid、Conti Eco Plusなど)をいくつか持っており、Michelinには無線周波数識別(RFID)が組み込まれたタイヤ(X Multi D、X Multi Energy Zなど)がある。組み込み型タイヤエレクトロニクスの開発も勢いを増している。Continental eTisはそうしたソリューションの1つであり、短期から中期的には他のさまざまなオプションにつながる可能性がある。ただし、CIT製品群で使用されるセンサー技術の主流はTPMSである。

CIT技術が恩恵をもたらすビジネス

ビジネスアプリケーション

CITのエコシステム全体は、タイヤをモバイルアプリケーションにつなげ、あらゆるタイヤデータをタイムリーに表示し、フリート事業者や個々のユーザーにその他のテレマティクスサービスを提供する。これにより、タイヤメーカーは製品からソリューション・サプライヤーに移行できる。Continental、Michelin、Bridgestoneなど大手は、フリート・ソリューションの導入により、タイヤメーカーからサービスプロバイダーへとその役割を拡大した。こうしたメーカーはTomtom Telematics(Bridgestoneが買収)やMasternaut Telematics(Michelinが買収)といった有名テレマティクス・サービス・プラットフォームの獲得により、タイヤを製品、位置情報サービス、メンテナンスサービス、デジタルプラットフォームとして提供している。

タイヤデータをインフラストラクチャ(道路状況など)や車両の測定指標と組み合わせることで、CITはモノのインターネット(IoT)の一部となり、接続された車両(V2V)や道路インフラストラクチャ(V2I)にデータを収集して共有するだけでなく、 Pirelli 5Gのコネクティッド・サイバータイヤが実証したように、インテリジェントで安全な運転を促進する。

タイヤの温度や圧力など、基本的なビジネスアプリケーションは、タイヤメーカーがその製品レンジで広くサポートしている。予測メンテナンス、テレマティクスやクラウドサービスを使用した摩耗通知などの高度なビジネスアプリケーションも成長している。加速度や車両負荷の監視など、車両情報を備えたセンサーフューズアプリケーションも、まとめて利用できる。

ネットワーク接続と組み込みソフトウェアプラットフォームを備えたCITは、そのエコシステムがさまざまなタイヤや車両向けのアプリケーションデータを生成する可能性があることを考えると、産業用IoT展望の不可欠な要素になる可能性がある。それゆえ、対処すべき重要な問題の1つとして、データ収益化機会を最大化する方法が挙げられる。これは、データサプライ・エコチェーンの心臓部である自動車メーカーに大きく依存する。すべてのタイヤデータがそのままの形で役立つわけではなく、通常、価値ある洞察を得るために車両の測定データと統合する必要がある。自動車メーカーとタイヤメーカーはフリート事業者とともに、GPSナビゲーション、テレマティクス、および/または他のテクノロジープロバイダーと提携し、収集したデータを強化する必要がある。

データを集約、形成、強化した後、フリート管理会社、サービスプロバイダー、タイヤメーカー、自動車メーカー、運送会社はそれを、所有コストとサービス効率に利益をもたらす新たな機会創出に使用できる。IHS MarkitのCIT調査は、車両と融合したタイヤアプリケーションデータの収益化に大きな価値があることを示唆している。ただしビジネス価値を引き出すためには使用事例シナリオの把握が不可欠である。

次図は、車両データと統合したタイヤデータがフリート事業者の日常の使用事例にどう役立つかを示している。事前データを手元に用意しておくことで、労力と機械や工具に関する時間が節約でき運用コストが削減される。

まとめ

付加価値サービスが新たな収益とコスト削減の機会を生み出すコネクティッドカー経済において、タイヤ技術は遅れを取っていない。タイヤメーカーは製品からソリューションベースの製品への移行を目指しており、自動車メーカーはデジタルサービスを二次的な収益機会として捉えている。これにより、モビリティサービスのバリューチェーンがさらに充実していく。

IHS Markitの「コネクティッド・インテリジェント・タイヤ」調査

IHS MarkitのCIT調査は、CITセンサー組み込み戦略、ビジネスアプリケーション、サプライチェーン情報等に関する洞察、背景データ、分析を提供する新たなデータ予測サービスです。世界と地域のCIT成長予測、サプライヤーの製品レンジ情報をカバーしています。

お問い合わせはIHS-Automotive-JP@ihsmarkit.comまで

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