COP26：気候変動対策は「加速」が必須、米中共同声明

2021年11月10日 | Kevin Adler

米国と中国の政府が、11月10日にCOP26で発表された共同枠組みの中で、気候変動に対するこれまでの誓約を繰り返すとともに新たな優先項目を発表、NDC（国が決定する貢献）について、新たにより厳しい2035年目標を掲げて更新する、と述べた。

米国気候変動問題担当大統領特使のJohn Kerry氏はこの共同声明を「この重要な問題に関する現在および将来の協力ロードマップ」と呼び、世界の2大経済が「地球温暖化をどのように抑制していくか、今後数年間でどう行動するか」を明確に述べるものだ、と語った。

リストのトップは、11月初旬にJoe Biden米国大統領が発表した米国メタン排出削減法と並行し、中国がメタン排出を制限するという誓約である。

9月に米国とEUが主導した世界メタン誓約に中国は参加していない。しかし今回の発表の中で、中国は来年のCOP27までに包括的メタン計画を策定し「2020年代のメタン排出抑制と削減に大きな効果をもたらすことを目指す」と述べた。

COP26でKerry氏は、排出削減の加速とその迅速な実行が「急務」であることを強調した。国際報道によると、地球温暖化を産業革命前の水準から1.5℃上昇までに抑制するというパリ協定の目標達成に向けた軌道に世界を乗せるには、2030年までに世界のGHG排出量を約45％削減する必要があるという。

中国の気候特使であるXie Zhenhua氏は、二国間協定は自国による「具体的措置」と「強化された気候変動対策」を含むだけでなく、世界にメッセージを送ってもいる、と述べた。

メタンとCO2

米国と中国は協定の一環として、2022年上半期に会議を招集して「化石（燃料）および廃棄物セクターからのメタン削減に向けた基準と、農業セクターからのメタン削減に向けたインセンティブとプログラムを含む、メタンの対策と低減の強化の詳細内容に焦点を当てる」と述べた。

Xie氏は記者会見で「中国は国家メタン計画を策定する」と述べ、この分野での米国との共同研究に関心を持っていると語った。

石炭火力発電もCO2排出量削減に向けたプログラムの一環としてターゲットとなっている。「衰えることのない国際石炭火力発電に対する国際支援の廃絶についての誓約」「この10年間で可能な限り早期に石炭の段階的削減を達成する必要性」を強調し、中国は第15次5カ年計画の一部として石炭削減を組み込む、と述べた。さらに米国はCO2排出量削減に向けて炭素の回収、貯蔵、および利用技術を共有する、と述べている。

大局観

IHS Markitのアナリストは、米中声明は大局観を示しているが詳細内容が不足していると指摘する。しかし、それはこの声明が取るに足らないという意味ではない。

「発表のどの側面が拘束力を持ち、どの側面が野心的で政治的であるかは明らかではない」とIHS Markitのエネルギーインサイト担当シニアバイスプレジデントであるAtul Arya氏は言う。「ただし世界の2大排出国が気候変動に対処するために協力しともに取り組もうという強い意志を表明しているという事実は、それ自体が重要なメッセージだ」。

石炭の段階的廃止の開始を第15次5カ年計画に組み込むという中国の誓約が重要であるだけでなく、第6条として知られる世界貿易プログラムに言及している点をArya氏は指摘する。

IHS Markitの調査分析担当シニアディレクターであるConway Irwin氏は、両国間の協力が拡大する可能性はあるが、中国は2060年のカーボンニュートラル達成を目指すとした計画の方針変更をまだ約束していない、と説明する。

「Xi（Jinping、習近平）国家主席は、中国が排出量をピークアウトできると信じる時期を設定した」とKerry氏は言い、「中国がもっと早くピークアウトできるという確信をもって議論した。中国は段階的削減の加速に最善の努力を尽くすだろう」と語った。

グリーンピースは米中声明を概ね前向きに見ているが、こうした取り決めは気候危機の解決の始まりに過ぎない、と強調する。

「米中声明は1.5℃目標が信頼できる気候計画の中心にあることを認めており、2020年代を具体的行動を示す必要のある10年間と見なしている。両国からのこうした姿勢が重要だ」とグリーンピースのエグゼクティブディレクターであるJennifer Morgan氏は言う。「このリセットを世界で信頼を築く真のブレークスルーに変えるには、野心の水準と実践に向けた誓約を強化する必要がある。グラスゴーでの協議の最後の2日間は、世界が求める取り決めを手にするために使うべきだ」。

IHS MarkitのArya氏は、実体とメッセージ発信の両方が重要だと言う。「共同声明は目標の本質的な変更よりも、感情的な影響の意味のほうが大きい。米両国間の相違にもかかわらず、気候変動対策で協力できるという重要なメッセージを世界のリーダーに送っている。これはCOP26を締めくくる前向きなメッセージだ」と述べた。

詳細

声明には「2020年代の温室効果ガス排出削減に関する規制の枠組みと環境基準」と「最終用途セクターの脱炭素化と電動化を促進する政策」という誓約があり、ここには、クリーンエネルギーへの移行、グリーン設計、再生可能資源利用による社会的利益の最大化が含まれている。

CO2排出の点から両国は以下を通じて発電セクターを継続的に変革する政策を策定する。

• 低コストの間欠性再生可能エネルギーの高い比率での統合
• 幅広い地域にわたる電力需給の効率的なバランスの促進
• 太陽光、貯蔵、その他クリーン電力ソリューションの電力利用者の近くでの統合
• 電気の浪費削減のためのエネルギー効率政策および基準の導入

声明はまた、両国が森林と土地の利用に関するグラスゴーリーダー宣言を支持し、違法な輸入を禁止する法律をそれぞれの国で施行することにより、違法な森林破壊を世界的に廃絶するために協力する、と述べた。

両国はさらに、「気候危機への対処における適応の重要性と、開発途上国における適応のための財政および能力開発支援の拡大の重要性を認識している」と述べ、開発途上国支援に向けた先進国による年間1,000億ドルの誓約を支持している。

両国は最後に、定期的に会合する「2020年代の気候変動対策強化に関する作業部会」を設立すると述べている。Kerry氏によると、同氏のスタッフと中国側のスタッフは2月以降、対面とオンラインで30回以上顔を合わせてきたという。

将来の協力に向けた場を設定することは合意の重要部分だ、とKerry氏は言う。「気候に関しては、協力がこの仕事を成し遂げるための唯一の方法だ。これは科学であり、数学と物理学が我々の進むべき道を決定する」とKerry氏は述べてた。

掲載日：2021年11月10日　執筆者：Kevin Adler（IHS Markit 気候および持続可能性グループ エディター）