G20、さらなる努力が必要。

2021年10月22日 Keiron Greenhalgh

国連の調査は、先進国による炭化水素生産の削減がパリ協定の誓約を果たすにはほど遠いことを示している。環境保護論者は、地球温暖化を遅らせるという誓約を例外という手段で回避しようとする舞台裏を暴露してきた。

中国とインドが主導する発展途上国グループは、先進国が約束したほど排出量を削減できておらず、歴史的責任から逃れようとし、10年以上前に約束した資金提供が実現していないことを挙げて先進国を非難している。LMDCとして知られるこのグループは、先進国が地球温暖化に対する自国の影響を歪曲し、自国内の炭素空間を過剰に使用するだけではなく発展途上国の炭素空間も使用していると指摘し、残りの大気空間を発展途上国に残しておくべきだと主張している。今世紀半ばのネットゼロ目標についても「主要先進国は今、パリ協定の目標を合意済みの内容から、2050年までにすべての国によるネットゼロ目標の採用へ変えようとしている」と批判し、このパリ協定違反は「不公平で気候正義に反する」「2050年までにすべての国にネットゼロ排出を求めることは、先進国と発展途上国の間にすでに存在する不平等をさらに悪化させる」と述べた。年間約1,000億ドルの資金がグローバル・ノースからグローバル・サウス、つまり欧州や北米以外の周辺国へ、とくに低所得の国々へと移動する時が到来しており、先進国は約束してきた財政的コミットメントを果たすためのロードマップを提示し、当初の数値以上に合計目標を上げなければならない、とLMDCは言う。この圧力は、ワシントンで気候変動との闘いに対する米国の対外援助を拡大する後ろ盾として役立つだろう。バイデン政権は現時点で、2022年度予算調整法案を含め、エネルギー転換問題と支出に関する優先事項を他に多く抱えている、とIHS Markitのプリンシパル・グローバルリスク・アドバイザーであるJohn Rainesは述べている。


さらなる前進

並行する動きとして、小規模な欧州諸国が主導する9カ国のグループが10月21日、G20に参加する経済大国に対し「自らが負う責任を完全に認識している」ことを明確にするよう呼びかけた。「最大の国々のリーダーシップを緊急に、今すぐ必要としている」ことをデンマークとスウェーデンを含む9カ国グループは主張し、約束された年間1,000億ドルの気候投資基金を拠出することで「地球規模の気候危機を回避する努力の背後にある経済の力」を出す「勇気」を示すよう求めた。IHS Markitのシニア・リサーチ・アナリストであるPetya BarzilskaはNet-Zero Business Dailyに対し、この叱責は裕福な国々から具体的な誓約を得るために、新しい外交メカニズムを開拓する試みである、と語った。署名国のうち6ヵ国はカーボンニュートラル到達に同意したが、低所得の世帯や企業への影響を軽減するために公的資金を使用する必要がある、とIHS Markitのカントリーリスク分析グループの一員であるBarzilskaは述べている。


炭化水素の約束

国連環境計画(UNEP)の調査によると、世界で最も裕福な国々が炭素の使用と結果として排出される汚染によって地球を破壊しているという。オーストラリア、カナダ、ドイツ、ロシア、サウジアラビア、英国、米国などでの活動を詳しく調査し、2030年には各国政府が地球温暖化1.5℃抑制に一致する量の2倍以上の化石燃料を生産する計画になるという見立てを公表した。石油や天然ガスの主要生産国の多くは2030年以降まで生産増加を計画しており、複数の主要石炭生産国が生産の継続または増加を計画しているとUNEPは警告している。この調査報告書はG20諸国がCOVID-19パンデミックの開始以降、化石燃料活動に約3,000億ドルの新規資金を向けており、これはクリーンエネルギーに対するものよりも多いと指摘している。全体的に見て、各国政府の生産計画と予測から、2030年の生産量は地球温暖化1.5℃抑制に一致する量に対し、石炭が240%超、石油が57%超、ガスが71%超となる見通しであることをこの調査は示唆している。UNEPは化石燃料生産の「迅速、公正、かつ公平な縮小」への道筋を図表化し、化石燃料の探査に制限を設け、化石燃料生産に対する政府支援を段階的に廃止する必要があることを認めるよう訴えた。この調査を受けて気候活動家のGreta Thunberg氏は、政治家が言葉と行動の間のギャップを無視して逃げることはもはや不可能であるべきだ、とツィートした


拡大するギャップ

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第3作業部会(気候危機への取り組みに必要な対策を評価する科学者チーム)に提出されたコメントを入手した環境保護団体グリーンピースによると、言葉と行動のギャップは拡大しているという。リークされた内容は、世界が化石燃料を段階的に廃止する必要があるという結論を削除あるいはトーンダウンするよう、オーストラリア、サウジアラビア、OPECがIPCCにロビー活動を行ったことを示唆している。ブラジルとアルゼンチンは、肉の消費とその汚染への影響に対する批判に対抗するロビー活動を行った。グリーンピースは、オーストラリア政府が他の国ほど多くの石炭を消費していないという理由で、世界の主要石炭生産国と消費国のリストから削除するよう要請した、と述べている。

UNEPは9月14日の報告書で、農業が気候変動の主な原因の1つである、と述べた。グリーンピース国際事務局長のJennifer Morgan氏は、「これは石炭、石油、食肉の生産国の小グループが、科学と地球の未来よりも少数の汚染産業の利益をどれほど優先し続けているかについての洞察である」と言う。「世界的リーダーにとっての試金石は、科学が正当化するように、化石燃料の急速な段階的廃止に同意するか否かである。彼らが失敗すれば、歴史は彼らに優しくはしないだろう。そして我々は注視していく」と述べた。


グローバルセキュリティの脅威

米国の情報活動コミュニティは、気候変動を世界の安全保障に対する脅威であることに同意している。米国国家情報長官室は10月21日に気候変動に関する最初の国家情報評価書(NIE)として「2040年までの米国国家安全保障に対する課題・気候変動と国際的対応」をリリースした。「気候変動によって地政学的緊張は、米国国家安全保障上の利益に対するリスクをますます悪化させる」と当局は述べている。GHG実質排出量削減の加速について議論が高まるにつれ、地政学的緊張が高まる可能性が高いと当局は述べ、誰が、どれだけ迅速に、行動し、代償を払う責任を負うかが今後の議論の中心になり、各国は資源管理とクリーンエネルギー移行に必要な新技術の支配に向けて競争することになるだろう、と付け加えた。

気候変動に関連する経済の移行支援に向けた国際通貨基金「信託基金」の迅速な設立を促した米国財務長官Janet Yellen氏は、こうした点を認識しているだろう、と米国財務省は言う。2040年以降の気候変動の物理的影響は発展途上国で最も強く感じられるだろうとNIEは付け加えている。NIEは、アフガニスタン、コロンビア、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、インド、イラク、ミャンマー、北朝鮮、ニカラグア、パキスタンの11ヵ国を重大リスクのカテゴリーに識別している。これらの国々のうち少なくとも4ヵ国はLMDC声明に署名している。

掲載日:2021年10月22日 執筆者: Keiron Greenhalgh(IHS Markit 気候および持続可能性グループ エディター)

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