グローバルなカーボンニュートラル時代におけるモビリティの進化

ドライバーのいない未来?

完全自動運転はインドではまだ日の目を見ないかもしれない。だがインドには半自動運転車について考慮すべきいくつかの要素がある。

Juili Eklahare

自動運転は未来だ。世界でもまだその地位を確立しようとしているところだが、インドの道路に登場するまでにどれくらいの時間がかかるのだろうか。自動運転セクターへの参入を発表したOla Electricのような企業も存在する。自動運転には機会と課題がある一方で、技術の進歩が自動運転に対する私たちの見方を変えてきている。

厳密に言えば、インドの自動車販売の約80%は小型車、あるいは通常AまたはBセグメントに分類される自動車である。インドは今後10年間、小型車またはコストに敏感な市場であり続けるとみられ、ゆえに自動化あるいは先進運転支援システム(ADAS)の国内普及規模は制限される。また政府は自動運転が多くのドライバーの損失につながる可能性があるとの見解を示している。S&P Global MobilityのシニアアナリストであるAman Madhokは「ADAS機能(レベル0およびレベル1)と自動化車両(レベル2からレベル3)への準備は整っているかもしれないが、自動運転(レベル4からレベル5)はまだであろう」と述べている 。

インドの自動運転-阻害要因は?

Madhokは、近い将来にはインドで自動運転車は見られないだろうと言う。「現時点で自動運転について話す内容は、数十年先のことだ。2050年代までにはインドの路上で自動運転が見られるようになるかもしれない。米国と中国ではWaymoのようなモビリティサービス事業者が、たとえ非常に限られたエリア内であれ、人々に自動運転による移動を提供している。世界の先進地域でも今後10年間では自動運転車が占めるシェアはわずかなものだと予想される。完全自動運転による移動は、当初は地理的境界線内のエリアまたは空港のような予測可能なルートから始まると考えられる」

Madhokはさらに「安全の必要性のほか、自動運転には付随コストの削減が重要な推進力となる。ロボットタクシーはドライバーを必要としないため、モビリティサービス事業者にとってはかなりのコスト節減になる」と述べた。

重要な要因

インドにはコストの制約、インフラの欠如、規制など、自動運転が居場所を見出すのを阻害する複数の課題がある。しかし、それだけだろうか?インドの自動車産業は、西欧諸国で開発された新技術を比較的速いペースで採用することに常にオープンだった。またBS IVからBS VIへと一気に進み、ファーストおよびラストマイル領域でのEVのけん引力を確認済みである。ただし自動運転に関しては、インドの広大な地理から道路状況、運転行動まで、はるかにたくさんのことが関わってくるだろう。

物事を大局的に見ると、BS IV、BS VI、EVには異なる推進要因がある。たとえば、BS IVからBS VIへのステップは、国の汚染レベルの抑制を目指す最高裁判所によって推進された。EVと同様、燃料費や環境問題といった要素が浮き彫りになる。ただし、自動運転車に関しては、環境問題はあまり関係がない。「自動運転技術が機能するためには、適切な車線マーキングを備えた適切な道路インフラが必要だ」とMadhokは語り、さらに「ドライバーの行動も注目領域になる。インドの交通規則はおそらく、最も守られていない規則と言えるだろう。自動運転システムは、運転行動や、道路の真ん中での停止、通りの邪魔になる動物、くぼみなど、インドの道路で目にする要素に慣れる必要がある。インドの気象条件も考慮に入れなければならない。インドの状況に慣れるためには、同じハードウェアをソフトウェアレベルで微調整する必要がある」と指摘する。

安全性-主な成長要因

自動化車両がインドに進出する場合、C以上のセグメントの自動車(自動車販売の約20%が成長しているセクション)である可能性がかなり高くなる。「第一に同セグメントがかなりの販売を占めている、第二に同セグメントの顧客はあまりコストを意識しない」とMadhokは指摘し「コストへの意識が下がるとともに、安全機能に対する支出をいとわない傾向が見られる」と述べる。

安全性に対する意識の向上は、今後のインドの自動化の主な成長要因となるだろう。自動車メーカー各社はADAS機能の提供で差別化を図り、市場で際立つ存在になるよう努めている。たとえば、自動運転機能を備えたMahindraのXUV700や、同様の機能を導入するHyundaiの計画などである。

ここ数年の間に業界内、政府内、顧客間で認識に多くの変化が見られた。「政府は独自の新車アセスメントプログラム(NCAP)を実施し、独自の安全評価を導入する計画を立てており、実装が容易で費用対効果の高い機能を推進することが予想される。たとえば前方衝突警告や車線逸脱警告などの警告ベースのADAS機能は単純な機能であり、設計やアーキテクチャに多くの変更を必要としない」 とMadhokは説明する。

さらにポストコロナでは、いかに命を救うかということに対する認識が強くなっている。「毎年約15万人が交通事故で亡くなっているインドでは、安全運転へ意識が高まっている」とMadhokは言う。

15万人は少なくない数字だ。ほとんどの交通事故は人為的ミスが原因であり、ゆえに自動運転は技術的な調査対象というよりも公共のニーズである、という意見をMadhokは持っている。「こうした事故への対処をADAS機能が制御あるいは支援できれば、多くの命を救うことができる」とMadhokは言う。

規制の必要性

最終的にはすべてが安全と人々の命に帰着する。ゆえにインドやその他の国で自動運転車を導入するための重要な基礎は、規制の必要性である。現在、インドには自動運転車専用の法律はない。さらにADAS機能の義務付けの前に、ADAS機能に特化した標準を準備することが重要だ。政府はインドでADAS機能を義務付ける前に、まずインドに合わせてカスタマイズされ、インドの道路状況においてテストされたADAS標準を作成する必要がある。

「現在、市場に導入されているすべてのADAS機能は、世界的な規制と安全基準に準拠している。インドの規制がきわめて初期の段階にあり、政府は自動運転に関連する具体的な標準または機能がいつ実装されるかについてのタイムラインを示していない」「インドでは自動緊急ブレーキ機能が政府の計画に従って2022年から2023年に義務付けされることになっていた。しかし現在、この機能の標準は存在しない。政府がタイムラインを設定し、自動車メーカー各社がそれに応じてADAS安全機能を備えた自動車の発売を準備できるようにすることが重要だ」とMadhokは断言する。

そのほかMadhokは、規制のほか、政府が十分な数の世界クラスのテストサイトを構築し、自動運転をテストするためのパイロットプロジェクトに資金提供する重要性も指摘した。

自動運転車の受け入れと信頼

ひとたび規制が策定されれば、車両に導入された新たなテクノロジーは商品化の必要があり、そのテクノロジーに対する消費者の信頼を築くことが極めて重要になる。「自動化車両がインドの路上で運転を開始し、人々がADAS機能の利用に慣れるにつれ、顧客の信頼が高まり、顧客の安心感が高まり、認識が変わることは間違いない」 。

テストが成功しインドの条件に適したものになれば、レベル1からレベル2の自動化車両が今後数年間でインドの路上を走行できるようになることは確かだ。実際、複数の企業がインドの自動車産業でこの技術の実現に向けて取り組んでいる。成長要因に焦点を絞り、インフラや規制といった主な障害を克服すれば確実に達成できるだろう。




BEVのCO2排出量、中国北部では従来車より多い地域も

2022年2月9日

中国の研究者が最近実施した調査によると、中国北部の一部地域でバッテリー式電気自動車(BEV)のライフサイクルCO2排出量が内燃機関(ICE)車よりも多く、またこれは同地域で化石燃料による発電が大勢を占めていることがその主要因であることが発表された。 中国は過去10年間で、車両購入時の補助金や政府が後援する技術やインフラ展開といった強力な政策支援により、世界最大のBEV生産国かつ購入国として台頭している。

中国の政策当局は、2030年までのCO2排出量ピーク到達と2060年までのカーボンニュートラル達成という国家目標を実現するには、低排出ガス車の普及拡大が不可欠だと考えている。

しかし、Hubei University of TechnologyのBowen Tang氏、Wuhan UniversityのYi Xu氏、State Grid Sichuan Electric Power CompanyのMingyang Wang氏が実施した調査によると、BEV増加は必ずしも排出量削減につながるとは限らないという。

中国の30省と地方自治体を評価したところ、Beijing、Heilongjiang、Jilin、Tianjin、Shandong、 Shanxi、Hebeiの各地域では、BEVからのCO2排出量がICE車よりも多いことが判明した。差が最も大きいBeijingでは、BEVのライフサイクル排出量が45.7メートルトン(mt)であるのに対し、ICE車は42.2mtだった。

他の地域ではBEVがCO2排出量削減に貢献している。脱炭素化の影響力が最も強いYunnanでは、BEVのライフサイクル排出量が約12 mtであるのに対しICE車では30.3mtだった。

「BEV推進は中国のほとんどの地域で炭素排出量削減に役立つ」と研究者らは言う。「しかし、発電構成、火力発電技術、送電効率の違いによって排出量削減効果は劇的に異なる」

同調査によると、BEVが悪影響とでた7地域では、発電構成に占める石炭、天然ガス、石油火力の比率が高いことが明らかになった。7地域のうち3地域では化石燃料が電力の85~90%を占めており、残りの4地域では90%以上となっている。

「(BEVの)推進による炭素排出量削減の効果は、火力発電の普及率が高い地域では弱められる」とこの調査は結論付けている。

バッテリーによる排出

この調査では、自動車の生産、稼働、リサイクルの各段階における排出量を考慮に入れている。原材料の抽出と処理の段階では、1台あたりのCO2排出量はBEVが6.28 mt、ICE車が3.38mtと仮定されているが、地域間格差は考慮されていない。

研究者らによると、BEVが生産段階で引き起こす汚染の多くは、コバルト、リチウム、ニッケル、アルミニウム、希土類元素を含む、バッテリーの生産がもたらす排出物による。

同調査は「BEVの場合、重要技術はバッテリー周辺にある」と指摘しているが、この分析は中国で使用されている2つの主要タイプのうちの1つ、リン酸鉄リチウムバッテリーに基づいている。このタイプのバッテリーは、カソードおよびアノード、電解質、セパレータ、パッケージ、バッテリー・マネジメント・システムで構成されている。

コンポーネントの製造には、グラファイトでコーティングされた銅箔とバインダー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ヘキサフルオロリン酸リチウム、炭酸ジメチル、アルミ箔、ワイヤー、回路基板、センサーが含まれ、これらからの排出量が考慮されている。

「CO2排出削減の評価、BEVの市場開発と政策立案に関する指針のためには、BEVのライフサイクルCO2排出に関する十分な知識が必要だ」とこの調査は指摘している。

推奨される政策

この調査結果に基づいて、研究者らは中国政府に対してBEV生産中に再生可能エネルギーを使用する相手先ブランド供給メーカー(OEM)のためのインセンティブ制度を設けるよう提言した。

研究者グループは、政府がそうした企業に再生可能エネルギー証書(REC)を発行するよう、また国内の取引制度を介して証書を売却できるようにすることも提案している。中国の政策当局でも、低炭素電力によって生産されたBEVを推進する車両スコアシステムを設計することが可能だ。

研究者グループはさらに、再生可能エネルギーの普及率が高い地域でBEVを推進できるよう、政府は提供する補助金を増やす必要があると言う。化石燃料が支配的な地域の政策については、再生可能エネルギー源からの発電を増やすことに焦点を当てるべきだ、と重ねて述べている。

「地域の事情に応じてターゲットを絞った推進策を、それぞれの地域で採用する必要がある」と述べ、政府は地域間の電力交換と送電を同時に改善する必要がある、とも指摘している。

中国における電力取引

一方で、ある地域ではEVよりも再生可能エネルギーに焦点を当て、その他の地域ではその逆に焦点を当てたとしても、中国の気候目標達成には貢献しない可能性がある、との指摘もある。

「自動車フリートの変更にいかに時間がかかるかを考えれば...現在のグリッドの炭素強度に応じたマイクロターゲット的BEV展開に根拠があるとは思えない」と述べるのはUniversity of California San Diegoでエネルギー研究を行っているMichael Davidson氏だ。「EVの比率がかなり高くなる頃には、グリッドはすでにクリーンになっているだろう」

当社で中華圏の電力および再生可能エネルギー事業を担当しているLara Dongシニアディレクターは、中国の政策当局はエネルギー安全保障の強化、製造能力の向上、大気汚染削減の手段としてもBEV推進を検討している、と指摘する。

「『BEVより前に再生可能エネルギーを推進する』という提案は、中国の政策設定と実施の手法としてはいささか直線的で過剰に単純化されていると思う」とDongシニアディレクターは述べている。

世界最大のGHG排出国である中国は、一次エネルギー構成における非化石燃料源のシェアを、2020年の16%に対して2025年には20%とすることを目標としている。また、BEVや燃料電池電気自動車などの新エネルギー車が2025年新車販売の約20%を占めるようになることを望んでいる。

中国は近年、再生可能エネルギーの容量を積極的に拡大している。中国電力企業連合会(China Electricity Council)は最近、中国の再生可能エネルギーの総設備容量は2022年末に、国全体の50%に相当する1.3 TWに達するという予測を発表した。世界第2位のエネルギー消費国である米国では、政府統計によると、再生可能エネルギーが2020年に公益事業規模の発電容量の25%を占めている。

しかし、政府当局者は、中国の公益事業セクターが排出量を削減しながら安定した電力供給を提供するには、送電網の改善と市場改革が必要であることを認めている。

国家発展改革委員会(NDRC)は先月の政策発表で、「再生可能エネルギーの普及が進むなか、中国が新たな電力システムを構築するのは危機的な時期だ」と述べている。「システムは全体論な方法で、調整可能でなくてはならない」

中国政府の目標は、省、地域間、および国の取引制度を組み込んだ全国的な電力市場システムを2030年までに確立することである。これにより、2030年までに再生可能エネルギーの消費シェアを40%にするという統一目標に直面している中国の省や地方自治体の間で、低炭素エネルギーの交換が容易になることが期待される。

地方自治体は現在、直接取引、REC(グリーン証書またはグリーン電力証書とも呼ばれる)経由、またはパイロット市場で、再生可能エネルギーを取引することができる。しかし、再生可能エネルギーに関する全国的な基準はまだ確立されていない。

市場参加者のリスクを軽減するために「各地域の市場に共通する基準を設定することがわれわれの目標だ」と中央計画機関であるNDRCは述べている。「そうすれば、(国内の)電力需給のバランスはもっとうまく取れるようになるだろう」

2022年2月9日投稿:Max Tingyao Lin(気候と持続可能性担当プリンシパルジャーナリスト)




IPCC報告書、差し迫った行動の必要性を提示

2021年8月9日 
Kevin Adler

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候評価に対する世界の反応は、報告書の文言と同じくらい強力なものだった。各国政府やNGOは、地球温暖化の最悪の影響を回避するには広範かつ深遠な対応が必須であることを報告書の結論があらためて証明した、と述べている。

気候変動分野のリーダー達は「身の引き締まる」や「恐ろしい」といった言葉を使用し、報告書は11月のCOP26の参加者に対し、世界のGHG排出削減に向けてより力強くより実行力のある措置を講じるよう圧力をかけると語っている。

スコットランド・グラスゴーで開催のCOP26まで残り3ヵ月を切った時期に公表されたIPCC第6次評価報告書(AR6)「自然科学的根拠」は、気温上昇と異常気象を人間の活動と強固に結び付けている。特に気温や海面の上昇に大きな打撃を受ける地域に対しては、広範な緩和策も必要であることを示している。

IPCCは、AR6にまとめられた14,000以上の研究レビューを含む証拠を、「議論の余地がない」としている。また報告書はメタン排出を特に有害であると初めて特定し、気候変動の地域的影響を詳細に掘り下げた。

国連環境計画事務局長のInger Andersen氏は8月9日の記者会見で、世界規模の行動を呼びかけた。「過去の過ちを元に戻すことはできません…。しかし、この世代は物事を正しくすることができます」「今ここにある気候変動に対して、私たちも今ここにいます。私たちが行動しなければ、誰が行動するのでしょうか?」と語った。世界気象機関事務局長のPetteri Taalas氏は記者会見で、過去数ヵ月間に見られた異常気象は、産業革命以前に比べて1.1℃の気温上昇に関係している可能性があると述べている。同氏は、北半球の記録的気温、ギリシャ、トルコ、シベリア、米国西海岸での火災、さらに「欧州と中国に洪水をもたらした大気中水蒸気の増加」にも言及した。

報告書のメッセージは明確だ、と英国国務大臣でCOP26議長を務めるAlok Sharma氏は言う。「次の10年間が決定的な役割を果たす。科学に従うことだ」と同氏は述べ、パリ協定で国が決定する貢献を強化し、拘束力と強制力を持たせるよう各国に呼びかけた。

3,500ページのAR6報告書の主要調査結果をレビューした後、IHS Markitのエネルギーインサイト担当バイスプレジデントであるAtul Aryaは、「モデリング改善と観測データの品質と量の向上により、気候の状態と将来予測に関する精度が過去の報告書よりもかなり高くなっている。AR5報告書の完成がわずか7年前の2014年だったことを考えると、気候科学の進歩は指数関数的だ」と述べている。

AR6の調査結果

AR6は、3つのIPCC報告書の1つ目に相当するもので、2050年までにネットゼロまたは排出削減を達成するシナリオから年間排出量が現在の水準から倍増するシナリオまで、5つのシナリオで予測される影響を概説している。AR6に続いて、適応方法と最悪のシナリオを防ぐ方法を検討する2つの報告書が2022年に公表される予定だ。

IPCCは報告書の中で、頻発する猛暑、氷河の融解、海洋の温暖化、雨の酸性化の主要因が人間の活動であることに「高い確信」を持っていると言う。「人間の影響で大気、海、陸が温暖化したことは明白だ」と述べている。

地球表面温度は、過去40年間のうちいずれの10年間で上昇してきた。「1850~1900年から2010~2019年までの、人間に起因する地球表面温度上昇の推定範囲は0.8°Cから1.3°Cであり、最適推定値は1.07°Cである」と報告書は説明し、「人間の影響により、気候は少なくとも2、000年間で前例のない速度で温暖化してきた」と述べている。

IPCCはさらに「1970年代以降、世界の海洋上層部(0〜700メートル)が温暖化したことはほぼ確実であり、人間の影響が主な推進要因である可能性が極めて高い」と指摘している。

新たな推定値では、世界が1.5℃温暖化するポイントの通過時点が2040年に加速している。今世紀末にかけて排出が抑制されない場合、気温が4.4℃以上上昇する可能性があることを報告書の最悪のシナリオは示唆している。

シナリオSSP5-8.5は、年間CO2排出量が2050年までに現在の水準の約2倍になる状況をモデル化しており、シナリオSSP3-7.0は2100年までにCO2排出量が2倍となる状況をモデル化している。シナリオSSP2-4.5はCO2排出量が2050年まで安定し、その後ネットゼロまで減少する状況をモデル化している。シナリオSSP1-1.9およびSSP1-2.6は、2050年以降ネット排出量がマイナスになる状況をモデル化している。



メタン

AR6では、メタン排出の影響に焦点を当てた章(第7章:「共通社会経済経路における短寿命気候汚染物質に対する気候と大気質の応答」)が初めて設けられた。メタンは石油と天然ガスの生産、採炭、農業に密接に関連する、強力なGHGである。

メタンレベルは現在、過去80万年のどの時点よりも高く、これまでの地球温暖化の約30%の主因となっている、とIPCCは述べている。報告書は、メタン排出量の「強力で迅速かつ持続的な削減」を訴えている。その調査結果を取り上げて、米国に本拠を置くNGOのEarthWorksはジョー・バイデン米国大統領に対し、2025年までに石油およびガス産業によるメタン排出量を65%削減するよう命じ「化石燃料拡大抑止のための気候に関する国家緊急事態を宣言」するよう求めた。オバマ政権は、新規の石油およびガス事業からのメタン排出量を約43%削減する規則を可決したが、これらの規則は法的な異議申し立てによって阻止され、トランプ政権によって覆された。バイデン大統領は新たな規則の作成を約束し、新規則はオバマ計画より厳しいものになることを示唆した。ホワイトハウス科学技術政策局のJane Lubchenco気候・環境担当副局長は8月9日に声明を発表し「報告書は、大気中濃度の観点だけでなく大気質の改善による人間の健康への相乗便益も含む、メタンの大幅削減による直接便益に注目を集めた」と述べている。メタンに関する報告書のコメントを踏まえて、Aryaは「エネルギー部門と農業部門の両方からのメタン排出を削減するための取り組みの加速」を予測している。

地域的影響

前回からの最大の変更点の1つは、モデリングによる地域およびサブ地域の予測の改善である。これにより、2020年のシベリアの熱波や今夏の中国の洪水などの事象は気候変動に関係している、と断言できるようになった。専門家が火災や洪水などの気象事象を気候変動に関連付けることができる「即効要因調査」は「注目に値する進展」である、とAryaは述べている。

報告書は、温暖化の影響は地理的に不均一であり、気温上昇に従って加速する、と説明している。「地球温暖化が進むにつれ、地域の平均気温、降水量、土壌水分の変化が大きくなる」と報告書は述べている。全体的な気温の上昇が1.5度を超えると、北極圏と北半球の高地の気温が3度上昇する可能性がある。同時に、降水パターンが変化する可能性もあり、高緯度地域、赤道太平洋、アジアのモンスーン地域の一部で年間降水量が20〜40%増えることも考えられる。

報告書は、氷河の融解は海面上昇に加わり海岸侵食を増大させ高潮を高めることで世界のほぼすべての地域に影響を及ぼす、と指摘している。IPCCの科学者たちは、氷河の融解はヒマラヤ山脈、ヒンドゥークシュ山脈、カラコルム山脈に顕著な影響を与えるだろうと述べているが、これらの山脈は60,000平方キロメートルの氷を蓄えており、北極圏と南極圏を除いて最も多くの水を蓄えている。水の影響は、富裕国は排出量を抑制するだけでなく、すでに発生している影響に対する脆弱国の対応を支援しなければならないことを示している。水に注目すると、7億5000万人以上が現在、氷河と雪を源とするインダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川に淡水を依存している。世界銀行は、2050年には南アジアで15億人から17億人が水不足で脆弱な状況に陥ると推測している。大西洋の海流で南から北に冷水を循環させてアフリカと欧州に雨を降らせるメキシコ湾流が弱まっていることから、猛烈な気象事象の発生頻度が増え、すべての地域で天候がより不安定になる可能性がある。天候の変化は、森林の乾燥などのさらなる負のフィードバックループにつながる可能性があるという。気候が温暖化すると、陸と海の両方で炭素吸収源の効果が低下する。

ケンブリッジ大学の気候科学者であるEmily Shuckburgh氏は記者会見でNature誌に7月に掲載された最近の調査を引用し、アマゾンでは炭素の排出量が吸収量より多くなっており、その主な原因は牛の飼育と農業のための土地開墾で発生した火事だと示している。

反応

ボリス・ジョンソン英国首相はCOP26の主催者として声明を発表した。「報告書は身の引き締まる内容だと解釈しており、次の10年間が我々の惑星の未来を守るために極めて重要になることは明らかだ」「我々は地球温暖化抑制のために何をするか把握している。石炭を過去のものとし、クリーンエネルギー源にシフトし、自然を保護し、最前線の国々に気候変動対応資金を提供することだ」

こうした目標の規模は、COP26代表団を待ち受ける巨大な課題を浮き彫りにしている、とAryaは言う。「気温(上昇)を世界平均で1.5℃に維持することは、必要となる炭素排出量の削減ペースが途方もないものであることから非常に困難だと思われる。排出量を削減しながら新興経済国の開発ニーズのバランスをとる方法-これがCOP26での重要論点になるだろう」とAryaは述べている。

国際気候コンサルティングとオフセットプロジェクト開発を手掛けるEcoActの北欧州担当CEOであるStuartLemmon氏は、この報告書の「トーンの変化」が必要なコミットメントと行動に拍車をかけるのに役立つ可能性があると述べている。「気候モデルと予測に関する慎重な言葉と躊躇は去った。メッセージは声高で明確であり、気候変動は今起こっていることで、その壊滅的影響を最小限に抑えるには今すぐ緊急の行動を取る必要がある」と同氏は言う。Sharma氏は、G20諸国は世界のGHG排出量の約80%を占めているため、より一層責任が重い、と言う。天然資源防護協議会会長のMitchell Bernard氏は、米国議会が「化石燃料産業とそれを支える組織からの反対に打ち勝つことができれば…気候変動対策と公平な回復を結びつける、バイデン大統領のより良い復興政策法案を可決することで…世界最大の経済として、米国はリーダーとなるべくステップアップできる」と述べている。

米国の気候変動問題担当大統領特使であるJohn Kerry氏は次のような声明を発表している。「IPCC報告書は、この瞬間の圧倒的な緊急性を強調している。地球温暖化を1.5℃に抑える能力に手が届かなくなる前に、世界は団結しなければならない」

協力:Amena Saiyid (Net-Zero Business Daily)

掲載日: 2021年8月9日 執筆者:Kevin Adler(IHS Markit 気候および持続可能性グループ エディター)




日本、2022年からカーボンクレジット市場の実証を開始

2021年8月6日

経済産業省(METI)は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みの一環として、2022年から全国的なカーボンクレジット市場の実証を計画している。まだ採択されていないこの提案の下ではカーボンクレジット市場(CCM)が形成され、企業が自主的に参加する構想だ。

東京都は2010年に、キャップ・アンド・トレード制度である地域排出量取引制度をアジアで最初に導入したが、地域を限定しない排出量取引制度は日本ではこれまで導入されていない。全国的取引制度の下、参加企業は排出目標を達成のため、または未使用割当量の現金化のため、カーボンクレジットを取引することができる。カーボンクレジットの取引価格は取引所が公開する。カーボン価格の設定と排出量取引制度の導入は、今世紀半ばまでに国の経済をネットゼロレベルまで脱炭素化するという日本の動きの一環である。日本は2030年にCO2排出量46%削減という中間目標を掲げている。

経済産業省の報告書によると、「カーボンニュートラル・トップリーグ」という仮称の加盟企業グループには、政府が設定する方法に従った排出削減目標の誓約と開示が求められる。また、各企業の実績は毎年、当局のレビューを受けることになる。

取引可能なカーボンクレジットは、加盟企業による排出削減、またはカーボンクレジットを作り出すプロジェクトのいずれかから発生する。既存の国内クレジット制度または認可された国際基準を満たす海外の自主的クレジットも含まれる。

研究グループではまた、非化石燃料価値取引市場、J-クレジット制度、二国間クレジット制度(JCM)を含む既存の民間カーボン市場の成長を加速する必要性も認めている。

非化石燃料価値取引市場において企業は政府が再生可能エネルギー源から発電された電力に発行した証書を取引することができる。J-クレジット制度は、林野事業または省エネ機器によって削減または除去されたGHG排出量を対象としている。JCMは、日本企業が海外のイニシアチブから生み出したカーボンクレジットを対象としている。

中間目標の実現に向け、菅義偉首相は4月の気候リーダーズサミットで「日本政府は、再生可能エネルギーなど脱炭素発電源を最大限に活用し、企業投資促進のための十分なインセンティブ措置を講じる」と述べた

5月19日の投資家とのオンライン会議で 菅政権当局者は、鉄鋼や発電といった部門がクリーンエネルギー源依存型ビジネスモデルへの移行に際して直面する困難を認めている。2020年11月には米国エネルギー情報局が、日本は2019年に世界第5位のエネルギー消費国であり、化石燃料(石油、天然ガス、石炭)が87%を占めていると報告している。 同じ会議の中で経済産業省の梶川文博環境経済室長は、二酸化炭素排出量の多い企業にとってカーボン価格は阻害要因になるだろうと述べ、脱炭素化の課題はCO2削減が難しい部門にとって特に困難であることを認めた。

日本の税金が製品価格に与える影響を調べる2021年4月の論文によると、日本は2012年以来、化石燃料産業に炭素1メートルトンあたり約289円(2.62ドル/mt)の炭素税を課しているほか、石炭、石油、ガス部門に個別の税金も課している。日本経済の他部門には同様の課税はない。政府研究グループはまた、カーボンフットプリント追跡技術の重要性も認識している。この分野の進展は日本の国際競争力強化に必要である。研究グループは、懸案事項の中でも、次に進めるのはカーボンクレジット取引制度の設計とカーボンフットプリントインフラの開発だと述べている。

オリジナルレポート:Lujia Wang(OPIS)
寄稿:Amena Saiyid (Net-Zero Business Daily)




IHS Markit分析と解説 自動車サプライチェーンの課題は継続。世界ライトビークル生産への影響は、2022年にも波及

Mark Fulthorpe(グローバル・ライトビークル・フォーキャスト エグゼクティブディレクター)
Phil Amsrud(シニアプリンシパルアナリスト)

ウェーハと半導体の生産能力、依然として逼迫

2021年前半の半導体不足の問題はウェーハのフロントエンド能力に関するものが中心だった。 幸いなことに、ルネサス那珂工場の火災と、NXP、Infineon、Samsungのファブに影響を与えたTexasの混乱は、概ね過去のものとなった。 ウェーハファブの生産能力は依然として逼迫しているが、これらのプラントの混乱が過ぎ去ったことから、その影響度は上半期より低くなっている。 ウェーハは集積回路(IC)の製造に必要ではあるが十分ではない。 フロントエンド工程の後にバックエンドの組み立てとテストの工程が続くが、これがもう一つの課題である。

フロントエンド工程で200mmまたは300mmのシリコンウェーハが数千ものシリコンダイに変換されるが、電子制御ユニット(ECU)の一部として回路基板にはんだ付けできる完成品ICにするには、それぞれのダイをパッケージ化する必要がある。

「ウェーハファブ能力は今年初めに皆の注目を集めたが、ダイをパッケージ化してECUに入れることができなければ自動車の製造と販売はできない」

ー Phil Amsrud(IHS Markit シニアプリンシパルアナリスト)

ウェーハは処理後に組み立てとテストの拠点に送られ、ダイ化、パッケージ化、テストの実施後に顧客に送られてECU内に配置され、その後に自動車に搭載される。

バックエンド工程の制約はフロントエンド工程の制約と同様にサプライチェーンを混乱させる可能性がある。 2021年前半はウェーハ製造能力の制約が最大の混乱を引き起こし最も注目を集めていたが、こうした制約が改善された今、リードフレーム、基板、樹脂の確保に関する別の制約が注目されている。

COVID-19が依然としてサプライチェーンに影響

主に自動車用MCUに影響を及ぼしていたウェーハファブ能力の制約とは異なり、組み立て能力の制約は、センサー、電源、ディスクリートを含むすべての半導体タイプに影響を及ぼす。 組み立てとテストの拠点は、中国、韓国、日本、シンガポール、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアに集中している。戦略国際問題研究所によると、シンガポールとマレーシアを除いて、これらの国の多くではワクチン接種率が6%未満だと報告されている。 マレーシアでは最近、COVID-19の発生で施設が閉鎖されており、ワクチン接種率は約12%である。 上記のうち複数の国で過去2週間の平均感染率が上昇しており、COVID-19が他国の労働力に影響を与えるという継続的な脅威が現実のものとなっている。 これは組み立てとテストの拠点にいる作業者とともに、完成品を世界に流通させるために流通ハブに運ぶ際に必要な労働者についても脅威となっている。

ウェーハ製造能力と同様に、パッケージ化能力も拡張の必要がある。 ただし、組み立てとテストの利益はウェーハファブの利益のごく一部であるため、投機的な能力追加には一層の躊躇が伴う。 組み立て装置も不足しており、一部ではリードタイムが40週間まで伸びている。 装置のリードタイムが伸びた主な理由の1つとして、半導体を入手できないことが挙げられる。 つまり、半導体を増産するために必要な装置が、十分な半導体が確保できないせいで入手しにくくなっているのである。

IHS Markitは、これらの状況を踏まえ、自動車セクター全体の半導体不足が2022年第1四半期、場合によっては第2四半期にまで拡大すると予測している。 IntelとInfineonはいずれもこの状況が2022年を通して続く可能性があると警告している。 ウェーハ能力には改善が見られるものの、状況は依然として課題を抱えている。

世界ライトビークル生産予測への影響 ― 最新アップデートでは対2020年比8.3%増

2021年世界ライトビークル生産予測は、8月発表の最新版で8,078万台となっている。これは2020年水準から8.3%の増加に相当する。

「半導体サプライチェーンの混乱により失われた生産台数は、第1四半期に144万台、第2四半期に260万台に達したと推定される。第3四半期の目に見えるダウンタイムは現在160万台で、第3四半期にも引き続き混乱が見られると予測しており、これはますます顕著になりつつある。第2四半期のような水準の混乱は見込まれないが、現在発生している程度のダウンタイムが9月まで続くとすれば、第3四半期の影響は180~210万台の範囲になる可能性が高いと思われる。第4四半期は継続的な混乱にさらされると予想され、この混乱は2022年第1四半期にも波及するだろう。 2022年第2四半期は供給の安定化を模索する時期になるかもしれないが、現時点では、回復努力が始まるのは2022年下半期に入ってからになる見通しだ。
2022年1年間では、上半期にすでに確認された損失に加えて第3四半期と第4四半期の推定値を考慮すると、半導体不足に関連した通年リスクは世界全体で630~710万台になるとIHS Markitでは予測している」

ー Mark Fulthorpe(IHS Markit グローバル・ライトビークル・フォーキャスト エグゼクティブディレクター)

第3四半期の状況はルネサスの回復遅れが自動車減産の主な要因となっている。製造能力は回復したものの、出荷能力が完全に戻るのは9月になる可能性がある。また、バックエンドのチップのパッケージ化とテストの事業拠点が多いマレーシアにおけるCOVID-19封じ込めのロックダウンが、さらなる不安定要因となっている。こうした事業はウェーハ製造工程よりも労働集約的であるため、活動は労働力を左右する公衆衛生対策の影響を受けやすくなる。

これらの進展を考慮すると、第4四半期は継続的な混乱にさらされると予想され、この混乱は2022年第1四半期にも波及すると予測される。 2022年第2四半期は供給の安定化を模索する時期になるかもしれず、現時点では、回復努力が始まるのは2022年下半期に入ってからになる見通しだ。




IHS Markit、改訂版EUフリート排出シナリオによるパワートレイン市場分析を発表

執筆:Tim Urquhart、Ian Fletcher(IHS Markitプリンシパル・オートモーティブ・アナリスト)

IHS Markitの視点

影響:欧州委員会は明日(7月14日)、欧州グリーンディール・イニシアチブの一環として、2030年までに欧州連合(EU)全体の温室効果ガス排出量55%削減を目指す「Fit for 55」法案を発表する。この法案は欧州自動車産業に多大な影響を及ぼす可能性がある。

展望:将来の乗用車排出規制に適用される内容として、2030年までのフリートCO2削減量が、現時点で提案済みの37.5%から50%へ、さらには高めの目標である65%へと引き上げられる見通しだ。これは当然、EU域全体のライトビークル電動化ペースの大幅な加速を意味する。

欧州委員会は明日(7月14日)、EU全体の温室効果ガス排出量を2030年までに1990年水準から55%削減することを目指す「Fitfor55」法案を提案する予定だ。この法案には「自動車およびバンのCO2排出基準を設定する規制の改正」と呼ばれる内容が含まれ、欧州自動車産業に多大な影響を及ぼす可能性がある。IHS Markitは、ライトビークル排出の将来の枠組みに関するこの発表は、乗用車のCO2排出量を2021年目標水準から37.5%削減するという現行提案よりはるかに進んだ内容になると見ている。IHS Markitでは現在、目標が50%から最大65%まで引き上げられると予測している。2035年までに乗用車と軽商用車(LCV)のフリートCO2排出量を100%削減するという提案を欧州委員会が提出すると見られる事実を考えると、より高い目標が設定される可能性が高い。

これはEU市場で事業展開している主要OEMの電動化戦略に多大な影響を及ぼす。こうした高めの目標が法案の可決成立に向けた確固たる提案として実行されれば、これまでに思い切って多額の電動化投資を実行してきたOEMが圧倒的優位に立つことは明らかだ。以下のデータは、各シナリオが示唆する2030年EU乗用車パワートレインタイプ別市場シェアを示す。

上記データは、これら2つのシナリオ下でバッテリー電気自動車(BEV)が非常に重視されることを強調している。EUで2030年CO2 37.5%削減を達成するには、39.4%のBEVシェアが必要になると予測されている。 50%削減シナリオでは必要なBEVシェアは51.5%に、65%削減シナリオでは62.9%になる。これは、BEV指向の一部顧客にとっての移行技術と見なされてきたプラグイン・ハイブリッド(PHEV)など、現在までに一般化しているBEV以外のパワートレインタイプにはマイナスに作用する。

EU全体での電動化の加速はOEMに影響を与えるだけではない。EUのリチウムイオン電池(乗用車用)市場では2030年需要が現在の37.5%削減目標での354 GWhから、50%削減目標では438 GWh、65%削減目標では528 GWhへと押し上げられると予測されるため、同市場は進化すると見られる。

これらのシナリオでは従来の内燃エンジン(ICE)パワートレイン向けコンポーネント需要が当初の37.5%の削減目標で予測されるより速いペースで縮小するため、一部のティア1サプライヤーの事業戦略にも多大な影響が及ぶ。事実、2030年時点のEU乗用車登録台数のうち依然としてICEを使用している車両のシェアは、当初目標の場合は60.3%であるのに対し、50%削減シナリオでは48%、65%削減ではわずか36.6%となると推測される。

展望と影響

欧州委員会が昨年末に「持続可能なスマートモビリティ」を発表した後、より積極的な排出目標の計画について正しい警告が出された。この提案には、2030年までにEUの道路に3000万台のゼロエミッション・ライトビークルをもたらし、「2025年以降のゼロエミッション・モビリティに向けた明確な道筋」を提供するという目標が含まれていた。

最近では、こうした転換が避けられなくなったことからOEM各社は電動化移行を加速する長期計画を発表しており、この転換に向けた準備をしっかり整えたいという意思を明確に示している。欧州地域のほぼすべてのライトビークルメーカーが過去6ヵ月間に改訂版戦略を公表しているが、注目すべきは3大ボリュームメーカーであるRenault-Nissan、Stellantis、Volkswagen(VW)Groupもここに含まれているという点であり、VWは本日この後に発表を控えている。各社の計画には前述の新たな目標の達成に向けた自動車の発売やブランド戦略の改訂が含まれており、なかにはVolvo、Ford、Mini、Jaguar、Opelなど、BEVオンリーとなるメーカーもある。さらに、予想される需要への対応に十分なコンポーネントを確保するための技術や連携に対する投資も発表されている。新たな目標の厳しさについては不満の声も多少あるようだが、業界にとってはこれがここしばらくの間の大きな方向性であったことから、ショックや過剰反応の可能性は低いと見られる。

また、水曜日に発表される内容は最終目標ではなく、今後数ヵ月間に欧州議会と欧州理事会の間で交わされるプロセスの一環として、EU法として成立する過程では多くの議論が行われる可能性があることにも注意しなければならない。確かに、2019年4月に2025年目標と2030年目標が合意される以前も同様だった。しかし、以前に課せられた目標が十分に進んでおらず、自動車業界が「Fit for 55」目標を達成するには非常に積極的な目標の設定が必要であることを認識して、環境ロビー活動家や急進派政治家の政治的勢いはますます高まっているようだ。

今回の発表は、BEV充電インフラにも大きな影響を与える可能性がある。ICE乗用車からのさらなるシフトには、対応する公共充電インフラへの投資を大幅に増やす必要がある。EU域内各国は充電インフラ投資について個別に発表しており、欧州委員会は昨年、「持続可能なスマートモビリティ戦略」を発表した。これは、2025年までに100万の充電ポイントを完成させ、2030年にはその時点で必要な300万の充電ポイントを完成させると約束するものである。ただし、2035年に向けたEU全体のBEV推進はこの計画の再検討の必要性を示唆するかもしれず、Bloombergが見た文書草案には、EU加盟国に対し主要高速道路沿いの60kmごとに公共充電ポイント設置を確保することを求める規制がライトビークルCO2排出量削減の加速を支えると示されている。

IHS Markitは引き続き発表を追跡し、ご活用いただける場合には追加分析を提供します。




IHS Markit、EUグリーンディールに関する最新分析を提供

執筆:Ian Fletcher、Tim Urquhart(IHS Markitプリンシパル・オートモーティブ・アナリスト)

Vijay Subramanian(IHS Markit グローバルCO2コンプライアンス予測担当ディレクター)のコメント引用を含む

欧州委員会は、2021年から2030年までにライトビークル排出量を55%削減し、2035年までに100%削減に移行することを提案の一部とする法案を発表した。

このライトビークル提案は、2030年までに欧州連合全体の温室効果ガス排出量を55%削減することを目指す「Fit for 55」法案に関連する欧州委員会の幅広い措置の一部である。結果的にこの提案が欧州議会によって承認された場合、それは2035年までに登録されるすべての新車がゼロエミッション車(ZEV)になることを意味し、実質的にICE車の全面禁止に相当する。

これはEU市場で事業展開している主要OEMの電動化戦略に多大な影響を及ぼす。以下のデータは、55% CO2削減目標の結果である2030年EU乗用車パワートレインタイプ別市場シェアを示す。

上記データは、この新提案の下でバッテリー電気自動車(BEV)が非常に重視されることを強調している。EUで2030年CO2 37.5%削減を達成するには、39.4%のBEVシェアが必要になると予測されている。 55%削減シナリオでは必要なBEVシェアは55.3%になると予測される。

EU全体での電動化の加速はOEMに影響を与えるだけではない。EUのリチウムイオン電池(乗用車用)市場では2030年需要が現在の37.5%削減目標での354 GWhから、提案された55%削減目標では468 GWhへと押し上げられると予測されるため、同市場は進化すると見られる。

こうしたシナリオでは従来の内燃エンジン(ICE)パワートレイン向けコンポーネント需要が当初の37.5%の削減目標で予測されるより速いペースで縮小するため、一部のティア1サプライヤーの事業戦略にも多大な影響が及ぶ。事実、2030年時点のEU乗用車登録台数のうち依然としてICEを使用している車両のシェアは、当初目標の場合は60.3%であるのに対し、55%削減提案ではわずか44.2%となる。

また、これは最終目標ではなく、今後数ヵ月間に欧州議会と欧州理事会の間で交わされるプロセスの一環として、EU法として成立する過程では多くの議論が行われる可能性があることにも注意しなければならない。確かに、2019年4月に2025年目標と2030年目標が合意される以前も同様だった。しかし、以前に課せられた目標が十分に進んでおらず、自動車業界が「Fit for 55」目標を達成するには非常に積極的な目標の設定が必要であることを認識して、環境ロビー活動家や急進派政治家の政治的勢いはますます高まっているようだ。

「2021年から2035年までの100%削減が厳しい提案であることは間違いない。これは他の主要市場と比較してはるかに高い水準の厳しさであり、2030年から2035年の5年間の乗用車新車販売については前年比でより急激なCO2削減が期待されることになる。2021年水準に対する55%のCO2削減という2030年基準を満たすには、フリート全体でバッテリー式電気自動車(BEV)シェアが55%必要になるかもしれない。これに相当する2030年のバッテリー需要は全体で468GWhになる。 しかし、2035年に向けてはBEVと全国規模の充電インフラに対して多額の投資が必要になる」 --Vijay Subramanian(IHS Markit グローバルCO2コンプライアンス予測担当ディレクター)




IHSマークイット連載1: 2030年代電動化100%への道筋

波多野通氏/Toru Hatano

パンデミックによる市況の乱高下や半導体不足など、電動化と脱炭素への道程は序盤から強い嵐が巻き起こった。日刊自動車新聞社と調査・情報分析大手のIHSマークイットは、今後もさまざまな風雨が予想される新時代への航路において、その羅針となる分析や検証、知見交換の機会を提供するセミナー「オートモーティブ・テクノロジー・エグゼクティブ・ブリーフィング(IEB AutoTech)2021」を、9月16日にオンライン形式で実施する。この連載では同セミナーの開催に先立ち、IHSマークイットのアナリストらとともに、情報リテラシーや事業環境把握の基礎となる重要事項を共有していく。脱炭素社会に向けて身に付けておくべき知識や、持つべき視点は―。初回は日本のパワートレーン予測を担当する波多野通アソシエイトダイレクターに、2030年代電動化100%への道筋を聞いた。
(吉田 裕信)

© 2021 Nikkan Jidosha Shimbun

 




IHSマークイット連載2:CO2マネジメントを掌握するステップ

Vijay Subramanian

脱炭素への機運が急速に高まり、その達成に向けて社会全体に対する見方・考え方が一段とシームレス化し、世の中のあり方が今まさに変わろうとしている。IHSマークイットの自動車部門でグローバル二酸化炭素(CO2)コンプライアンスなどを分析するビジャイ・スーブラマニアン・ダイレクターに、CO2マネジメントを掌握するステップを聞いた。
(吉田 裕信)

© 2021 Nikkan Jidosha Shimbun

 




IHSマークイット連載3:次世代モビリティへ それぞれの進捗

Tom De Vleesschauwer

次世代モビリティと脱炭素への進捗は、世界の主要国・地域で差はあるのか。自動車および運輸産業をさまざまな視点から洞察する、IHSマークイットのグローバル・トランスポート&モビリティ・プラクティスリーダー、トム・デ・ボリーシャワー氏に聞いた。
(吉田 裕信)

© 2021 Nikkan Jidosha Shimbun

 




IHSマークイット連載3:電動化と脱炭素へ サプライチェーンの責務

Graham Evans

カーボンニュートラル実現に向けてサプライヤーはどう動き、何をすべきか。IHSマークイットで自動車技術とサプライチェーンの分析や展望を担当するグラハム・エバンズ・ダイレクターに、今回の半導体不足発生の振り返りなどと合わせて聞いた。
(吉田 裕信)

© 2021 Nikkan Jidosha Shimbun

 




IHSマークイット連載5:電動化推進の鍵 バッテリー課題の打開策

Richard Seiho Kim, Ph.D.

車両電動化推進の前提となるバッテリー供給の拡大は、どうすれば実現できるのか。IHSマークイットで自動車技術とサプライチェーンを担当し、電池技術や供給体制を分析、予測するリチャード・セホ・キム氏に聞いた。
(吉田 裕信)

© 2021 Nikkan Jidosha Shimbun

 




持続可能な航空燃料、コスト問題で供給不足

2021年7月7日 Cristina Brooks

IHS Markitの気候および持続可能性サービスの概要報告によると、航空会社は脱炭素化のため、より安価でより広く入手可能な、環境に優しい燃料を必要としている。

世界の輸送によるCO2排出量の12%を占めている航空業界は、グローバルなネットゼロ・ソリューションに向け、その割り当てに応じた責任を担うよう欧州と北米で圧力を受けている。

持続可能な航空燃料(SAF)は、一般的にバイオ燃料または水素と炭素を使用して製造される低炭素燃料である。商業環境では2011年以来、既存エンジン向けに最大50%の割合で従来のジェット燃料とブレンドして使用されているが、低炭素技術の発展に従って混合燃料の大部分を占めるようになるだろう。

このブレンドのレベルが高くなると、航空会社はSAFの相対コストを消費者に転嫁するかもしれない。IHS Markitのデータによると、予想されるEU提案に従って63%のSAFとA1ジェット燃料を混合すると、AmsterdamからNew Yorkへのフライトのチケット価格が約120ドル上昇する。IHS Markitの部門であるOPISが収集した欧州スポット市場価格に関するデータでは、SAFの価格は現在、従来のジェット燃料の価格の約5倍だ。

パンデミックがもたらした航空業界の混乱が、コスト問題をさらに顕著なものにしている。「航空会社は利益率が低く資本集約的環境で運営されている。過去1年間に直面した深刻な混乱の結果、多くの航空会社が不安定な財政状態にある状況下では、従来のジェット燃料との価格差が大きいままである限り、自ら進んで大量のSAF使用を約束する航空会社が出てくるとは予測しがたい」とIHS Markitアナリストは報告書に記している。

航空業界はSAF生産に資金提供する政策を求めている。OregonやCaliforniaといった米国の州では、SAFクレジットを授与する州の低炭素燃料基準(LCFS)によってSAFが手頃な価格になっているが、全国採用に必要な量の生産にはさらなる財政支援が求められる、とIHS Markitのアナリストは述べている。

ノルウェーは、SAFの義務付けを導入した世界で唯一の国である。2020年1月以降、ノルウェーで供給されるすべてのジェット燃料には少なくとも0.5%のSAFが含まれている必要がある。

他の欧州諸国でも過去2年間で同様の義務付けの計画が発表されている。スウェーデン、フィンランド、フランス、スペイン、ドイツ、オランダでは、義務付けが確認されたか計画されているかのいずれかである。これらの国のうち数ヵ国は2月の声明で、SAF市場の成長を奨励するよう欧州委員会に要求した。

ReFuelEU

EUのイニシアチブ「ReFuelEU Aviation」が、航空会社に対し、2%レベルにブレンドされたSAFの使用を求める可能性があり、予備提案では2050年の63%到達まで5年ごとにこの割合が引き上げられることになっている。このイニシアチブは、EU域外の出発地と目的地のフライトも対象とする可能性があり、その目的は、先頃法制化され欧州グリーンディールの下で約束された2050年カーボンニュートラル目標をEUが達成できるよう、SAFの使用を促進することである。

2020年の協議に続き、ECは7月14日にその排出目標達成を目的とした一連の「55%適合」法案とともにReFuelEUを提案すると発表した。ReFuelEUは海運や航空といった業界に対する低炭素燃料の需要と供給を対象とする。

航空業界団体はより多くのSAFを使用するというコミットメントを検討しているが、世界規模の義務付けはまだ遠い未来の話だ。国際航空運送協会(IATA)は、2021年10月に加盟国が採用するネットゼロ政策を提案すると約束した。国連加盟の国際民間航空機関(ICAO)の代表団も、2050年までに混合航空燃料におけるSAFの「割合を顕著なものとする」という目標を約束した。

しかし、欧州と北米の域外でSAFに対する国の支援は「事実上存在しない」ことをIHS Markitは発見した。「世界的な政策コンセンサスが短期に浮上する可能性は低いが、欧州と北米におけるSAFに対する政策支援は引き続き強化され、その程度はかなりのものになる可能性がある」と述べている。

ここ数週間、欧州の燃料業界企業は、ReFuelEUのような提案済みの規則が創出する需要を見越して生産能力を増強する計画を発表している。

ShellのSAFプロジェクトは計画進行段階にあるが、最終的な投資決定は保留中である。Shellは、7月2日に10MW電解槽の操業を開始したドイツ・Wesselingにある同社精製所で、バイオマスやグリーン水素をベースとしたSAFを生産する。同社は、「従来燃料」の精製を減らし、2050年までにネットゼロ排出事業となる計画に沿って廃棄物からより多くの化学物質を作り出すことをこれまでに約束している。

フランスの大手企業Totalの最近のブランド変更後の名前として知られるTotalEnergiesは7月6日、微細藻類からの新たなバイオ燃料生産の探究に向け、エネルギーサービス企業Veoliaと同社La Mèdeバイオ精製所で提携することを発表した。TotalEnergiesは精製所で生産された食用油ベースのSAFの販売を開始する計画である。

SAFは航空排出削減に向けて計画段階にある唯一の燃料ではない。Air Liquideは6月21日、航空機メーカーのAirbusとともに、世界の30ヵ所の空港での液体水素供給を研究する 計画を発表した。Airbusのゼロエミッション航空機担当副社長であるGlenn Llewellyn氏は、水素を「最も有望な」ゼロエミッション技術と呼んでおり、航空機の燃料電池と内燃機関の両方で使用可能だと述べている。しかし、ライバルの米系航空機メーカー、BoeingのCEOであるDavid Calhoun氏は、水素技術はまだまだ先が長いと語っている。

掲載日:2021年7月7日 執筆者:Cristina Brooks(IHS Markit 気候および持続可能性 シニアジャーナリスト)




国連招集のネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスがグローバル炭素価格を要求

2021年7月7日 IHS Markitエネルギーエキスパート

国連が支援するネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスが、最低価格と最高価格を備えた拘束力のあるグローバル炭素価格の迅速な賦課を求めた。アライアンスに加盟している43の機関投資家は6.6兆ドルの資産を管理している。

同アライアンスは経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査を引用し、2050年までにネットゼロ排出を達成するには2030年までに147ドル/mtの炭素価格が必要だと述べている。これは、現在世界最大であるEUの排出権取引システムの現時点の価格である約59ユーロ/mt(69.56ドル/mt)と比較される。価格は2020年秋以降、11月初旬の24ユーロ/mt未満から着実に上昇している。

アライアンスの各メンバーは、2050年までに投資ポートフォリオをGHGネットゼロ排出に移行し地球温暖化を産業革命前の水準から摂氏1.5度上昇までに抑えるという、パリ協定の意欲的目標を約束している。

炭素価格設定メカニズムは既存の排出権取引プログラム、税金、および賦課金を補完することになる、と同アライアンスは7月6日発表の方針説明書で述べている。

この説明書は米国とEUによるハイレベル気候アクショングループ立ち上げから1ヵ月後に発表された。は、11月にスコットランドで開催されるCOP26に先立って排出目標を引き上げることで、世界中の国々に「意欲的」であるよう圧力をかけることを目的としている。

提案された炭素税は、化石燃料の「価格回廊」として機能し、投資家に価格設定についてより大きな確実性を与える。現在実施されている炭素取引プログラムは、化石燃料の需要を減らすのみならず、コストを削減し代替燃料との価格競争力を維持することで継続的な使用を奨励するという逆効果ももたらす。「ここで炭素価格設定が作用し、化石燃料やその他の高排出活動をより高価にする」と報告書は説明している。


Source: ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス

同アライアンスによると、化石燃料を比較的高価に保つことで、政府は「さまざまな業界および関連投資にまたがる幅広いシグナル」を送り、ネットゼロへの移行に取り組んでいることを示せるという。

これは、米国、EU、中国などの政府や民間の利害関係者が、気候リスクを意思決定に組み込み、気候リスクの影響度開示を増やすよう、投資家に圧力をかけるための多くの取り組みを補完するものである(参考記事はこちらとこちら)。

「フロア、すなわち最低市場価格は、投資家に確実性を提供し、価格暴落に対するガードレールを提供するよう設定できる。シーリング、すなわち最高市場価格は、価格の急激な上昇に対するガードレールを提供し、炭素価格に対する政治的支援をより広範囲で損ない得る反発を防ぐ」と同アライアンスは述べている。

こうした炭素価格はまた、収益を上げることでエネルギー移行をより一層支援し影響を受ける当事者への影響を軽減することにもつながる。

同アライアンスは、時間の経過とともにフロアとシーリングの両方を引き上げるべきだと述べているが、OECDの炭素価格である147ドル/mtは、世界の気温制御に必要な価格についての最近の推定よりも高い側にあることも認めている。こうした推定値の最大の変動要因は、炭素回収技術の進歩のペースと排出削減のための産業プロセス修正方法についてモデル開発者が前提とする条件である、と報告書は述べている。

同アライアンスはOECDの報告書を再度引用して、64の国、地域、州が何らかの炭素価格設定イニシアチブを持っており、その対象は炭素排出量の約20%に及ぶと述べている。価格は国によってだけではなく、対象とする排出形態によっても大きく異なる。

「たとえば、OECDが分析した64ヵ国では、電力に適用される炭素価格レベルは、排出量の90%で1トンあたり30ユーロ(約37ドル)未満だった。反対側の領域である交通輸送では、排出量の91%が30ユーロ以上の価格であり、58%が120ユーロ(約147ドル)を上回っていた」と同アライアンスの報告書は指摘している

グローバル価格コリドーはこうした差異のバランスを、単純かつ直接的な方法で取るものである、と報告書は説明する。輸入品に適用される国境調整メカニズムなど、炭素価格に関する他のオプションははるかに複雑であり、世界貿易機関の紛争の対象ともなっている。

同アライアンスはまた、炭素価格には、化石燃料補助金の廃止、ゼロエミッション・エネルギー技術開発への投資、グリーン建設と建物改修の促進、自動車輸送の化石燃料からの脱却など、他の重要な政策措置を伴う必要があることを強調している。

OPISのAbdul LatheefとKevin AdlerによるBeyond Net Zero Dailyの独自レポートを含む。




中国規制当局がESG開示規則を設定

2021年7月6日 Amena Saiyid

中国の規制当局が、環境、社会、ガバナンス(ESG)要因のリスク開示を目的とした、上場企業向けの新たなガイドラインを公表した。中国本土、香港、台湾で財務顧問や機関投資家、ファンドマネージャーがこの分野への投資を強化していることが背景にある。

中国証券監督管理委員会(CSRC)が6月28日に 発行したリスク開示規則の最終セットでは、環境保護と社会的責任への関心の高まりが初めて強調された。

中国のクリーン技術製造はフットプリントが大きく、このセクターへの投資意欲が国内外とも高まるなか、金融機関は新技術がもたらすリスクにさらされている。

これら金融機関が上場投資信託(ETF)からグリーンボンドに至る新商品を発売するに従い、中国政府は国内で成長している金融活動のサブセクターとなったものを規制する意図から介入してきた。

CSRC規則では、企業は、大気、水、土壌の汚染防止手順に加え、廃棄物の管理方法と環境事故の報告方法を開示する必要がある。

ただし、米国における同等機関である米国証券取引委員会と同様、CSRCは、国のカーボンニュートラル目標達成に向けて企業が自主的に炭素排出量を報告することを奨励している。CSRCはまた、貧困緩和の結果と地方活性化の取り組みによってもたらされるリスクの自主的な開示も要求している。

この規則はまた、企業が生物多様性への悪影響を開示することも奨励しているが、報告を義務付けてはいない。中国・Kunmingで国連生物多様性会議が10月11日から24日まで開催されることを考慮すると、この義務付けの省略は注目されるところである。この会議には、生物多様性条約(CBD)の第15回締約国会議が含まれる。1992年に署名されたCBDは、種の保全からすべての資源の持続可能かつ公平な使用まで、生物多様性の全側面をカバーする世界初の合意である。

何より、この規則ではESGリスク報告のための指標が提示されていない。

IHS Markit戦略ガバナンス・アドバイザリーおよびESG統合のグローバル責任者であるChristine Chowは7月6日、Net-Zero Business Dailyに「企業ガバナンス開示、特に支配株主、内部統制、補助金管理に関する問題についての改善は歓迎したい」と語った。

Chowは、カーボンニュートラル目標とパリ協定が投資家リスクに影響を及ぼす脱炭素化の政策と技術を推進しているにもかかわらず、この規則ではこの2つの要因に言及していない、と指摘している。2060年までにカーボンニュートラルを達成するという中国の公約を考慮すると、ESG履行開示の改善に向けてさらに多くのことができるはずだ、とChowは重ねて述べている。

「生物多様性に関する中国の意欲的なリーダーシップを考えれば、企業の事業運営に統合されるべき自然ベースのソリューション手法に関して、さらに多くのガイダンスが期待される」とChowは言う。

一方、低炭素の未来に向けて政策と資源を調整する国が増えるに従い、中国系金融機関はESG分野への投資機会を活用する動きを示している。

米国系投資銀行のBrown Brothers Harrimanによる6月9日の調査 は、ESG投資が、特にETFを通じて、中国本土、香港、台湾の投資家の注目を集めたことを明らかにしている。同銀行はESGに費やされた特定ファンドに関する情報は開示していないが、この調査で投資家サイドの明確な関心が確認できたと述べている。

この調査では中国本土、香港、台湾の回答者の少なくとも92%が、今年はESG戦略に割り当てる資本を増やす予定だと述べ、146人の回答者の半数以上がポートフォリオの少なくとも11%をESG関連のETFとする見通しを示した。

世界のETFトレンドを扱うコンサルタント会社、ETFGIによる6月24日の推定では、2021年1月~5月の5ヵ月間でESG要因に関連するETFおよび取引関連商品に流入した金額は世界全体で739.5億ドルで、2020年同期間の264.2億ドルの3倍近くという記録的水準に達している。

掲載日:2021年7月6日 執筆者:Amena Saiyid (IHS Markit 気候エネルギー研究 シニアアナリスト)




SK Innovation、バッテリー事業のスピンオフを検討

2021年7月6日

韓国系企業のSK Innovationが、ポートフォリオ全体の価値最大化を目指してバッテリー事業をスピンオフする可能性を検討している。同社CEOのJun Kim氏が今月に入り投資家に語った

同社では初めて1TWhを超える電気自動車(EV)バッテリーの注文を獲得、その推定金額は約130兆韓国ウォン(1,140億ドル)相当で、さらに複数の国際的自動車メーカーとの取引も見込まれている。

SK Innovationのバッテリー事業プレジデントのDong-Seob Jee氏は7月1日の「SK Innovation Story Day」で、2022年末までに月間売上高で世界第3位のメーカーになると語った。トップ2は、中国のCATLと、国内外でSK InnovationのライバルであるLG Energy Solutionである。IHS Markitの統計によると、SK Innovationの現時点のランキングは6位にすぎない。

SK Innovationでは生産能力の大幅増強を期待している。Jee氏は投資家に対し、「(生産能力は)現在の40GWhレベルから2023年に85GWh、2025年に200GWh、2030年には500GWh以上に達する見通しだ」と語った。

同社は韓国と中国のみならず米国とハンガリーでもバッテリー生産拠点を拡大している。Mercedes-Benz、Hyundai-Kia Motors、FordなどがSK Innovationのバッテリー事業の顧客である。

今年5月、SK InnovationとFordがBlueOvalSKという名称のバッテリー合弁事業(JV)を設立する覚書に署名した。このJVは今後10年間の期間中盤に生産開始、年間約60GWhの生産を目指す。

SK InnovationはすでにこのJVの他に米国で2つのバッテリー工場に投資している。同社はこの2工場に25億ドルを費やす計画で、年間生産能力は合計21.5GWhになる。1つ目の工場はすでに建設中である。

SK InnovationがLG Energy Solutionと長期に渡って争っていた電気自動車を巡る知的財産紛争が土壇場で決着する前の2021年前半、これらの米国2工場は危機に瀕していた。両社は米国と韓国での法的争いで和解、SK InnovationがLG Energy Solutionに2兆ウォン(17.6億ドル)を一括払いとロイヤルティの形で支払うことで合意した。

この取引は、バイデン政権とFordやVolkswagenなどの顧客に救いの手を差し伸べることになった。バイデン政権の合い言葉「より良い復興」と気候目標 は、何よりもまず、国内生産とEV使用の拡大に依存している。

SK Innovationは、検討あるいは可能性のあるスピンオフのスケジュールについては明らかにしていない。

ただし、SK Innovationはクリーンエネルギー部門のスピンオフを経験している。2019年4月、同社はバッテリー材料事業をSK ie technologyとして分社化した。この部門は電気自動車用リチウムイオン電池セパレーターを製造している。今年4月、SK ie technologyは30%の新規株式公開で約2兆2500億ウォン(19.8億ドル)を調達した。

「カーボンからグリーンへ」

スピンオフの可能性は前述の7月1日イベントでSK Innovationが行った多くの発表の1つだが、多くの人が炭化水素からグリーンテクノロジーへの移行をテーマとし、「カーボンからグリーンへ」というスローガンを掲げた。

同社は、2035年までのバッテリーとセパレーターのオペレーションにおける達成を含め、2050年までに事業全体でGHGネットゼロ排出の達成を目指している。SK Innovationはまだ精製部門と化学事業を所有しているが、ここでは2030年までに50%の排出削減を達成し、2050年までにネットゼロを達成すると述べている。

同社の計画には、環境に優しいプロセスの開発、低炭素製品への切り替え、炭素回収技術など炭素削減技術の実践が含まれている。

SK InnovationのJong-hoon Kim会長は、同社では2025年までに合計30兆ウォン(260億ドル)をグリーン成長に投資する計画だと語っている。

SK Innovationはグリーン資産の割合を現在の30%から70%に引き上げることを目指している。2027年までに、生産するプラスチックを100%、つまり年間250万トン以上をリサイクルし、使用量を減らし、環境に優しい製品の割合を100%に増やすことを目指している。「SK Global Chemicalは2025年にグリーンビジネスで6000億ウォン以上のEBITDAを挙げることになるだろう」と同社は述べている。

新たな領域

SK Innovationはまた、エネルギー貯蔵システム、空飛ぶ車、ロボットへと事業領域を拡大するとともに、EVバッテリーをベースにした新規事業の開発も行うと決定した。バッテリーのライフサイクルを効率的に管理するための、サービスプラットフォームとしてのバッテリーもここに含まれると同社は述べている。

同社では精製技術に基づいてバッテリーのリチウム回収技術を開発し、その技術に関連する54の特許を申請していることから、バッテリーのリサイクルも今回の変更の一部となる。同社は、新技術の使用によってリチウム採掘から発生する炭素を40〜70%削減できると考えている、とも述べている。

SK Innovationは2022年中に試作生産を開始する予定で、2024年までに韓国などで商業プラントの稼働開始を望んでいると述べている。また、2025年には30GWhのバッテリーをリサイクル予定だとしている。

-Chemical WeekのKartik Kohliによる独自レポートに基づく




IMO、海運の炭素排出削減へ新計画。対策は十分?

2021年7月6日Cristina BrooksKevin Adler

世界の年間炭素排出量の約3%を占める海運業に対し、2050年までにネットゼロ炭素排出達成という国際目標への貢献するよう圧力が高まっている。

専門家によると、国際海事機関(IMO)が主導する海運業界は、排出削減への取り組みと達成において、電力、自動車、石油、天然ガスの各業界に遅れを取っている。

6月17日のIMO第76回海洋環境保護委員会(MEPC 76)で発表された改訂版国際規制でさえ、環境活動家や気候活動家からは不十分と見なされている。

法律事務所Reed Smithの運輸業界グループのパートナーであるNick Austin氏は、同事務所が6月に主催したウェビナーで、「海運が脱炭素化への道において極めて重要な瞬間に近づいていることは間違いない」と述べた。

IMOは、2050年までに海運による排出を2008年水準から半減させるという目標を設定していたものの、MEPC 76では暫定目標を設定できなかった。

MEPC 76は、化石燃料使用の扱いについての長期的規則案可決に向けたタイムラインに関する合意で終了するとともに、短期的措置では業界をネットゼロに向けて十分に動かすことができないという認識で一致した。この認識はEUを中心とする世界各国政府に対し、直接的義務によるか炭素税によるかを問わず、海運業界に排出削減を課す法律を可決するよう促す可能性がある。

2つの新たなデータ要件

IMOが採択した改訂版国際条約(MARPOL附属書VI)は、2つの措置を通じたデータ報告の拡大と適度な排出削減を求めている。MEPC 76ではアルゼンチンが100番目の条約批准国となった。

これらの措置は、国際取引を行い条約締結国で登録されている、特定の総トン数を超える貨物船およびクルーズ船すべてに適用される。措置は2022年11月1日に発効し、2026年に有効性の見直しが行われる。

1つ目の措置は炭素強度(CI)削減要件である。船主は、実際に運ばれる貨物を考慮して、各船舶の炭素強度指標(CII)を毎年計算する必要がある。また、船舶固有の年間目標を達成するためのCI削減計画を立てなければならない。旗国という名でも知られる、船舶が登録されている国の当局は、船舶が報告したCIIをその目標と比較し、格付けを作成し、船舶の格付けが低すぎる場合は是正計画を要求する。

このCI措置では、フリート全体の準拠船舶で2026年までに2019年水準から約11%削減を達成することが期待されている。IMOでは、これは、2040年までに50%のGHG排出削減を達成するために2008年から2030年の間にセクター全体で40%の炭素強度削減を目標とする、2018年の初期GHG戦略と一致している、と述べている。

2つ目の新たな指標である既存船エネルギー効率指標(EEXI)は、船主に対する既存のエネルギー効率エンジニアリング義務をアップデートしたものである。EEXIは既存船舶の技術改善も対象としているため、その範囲は新造船向けの現行のエネルギー効率規則(エネルギー効率設計指標)よりも広くなっている。船主は今後、船級協会が実施するEEXIを使用した調査についても、所有船舶が必ず受けるようにすることが求められる。

船主と運航業者は2023年1月1日までに、同年に予定されているEEXIとCIIの最初の年次報告より前に、船舶エンジンによる燃料消費の削減の選択肢を調べる必要がある。

化石燃料効率技術が勝利

IHS Markitの海事コンサルティングプリンシパルであるKrispen Atkinsonは、いずれの措置も海運セクターに変化をもたらすと述べている。「EEXIは多くの人にとって頭痛の種になるだろう。業界周辺では、この措置の施行はリタイアする船の急増につながる可能性があるという話が出ていた」とAtkinsonは言う。

ところが、機関出力制限(EPL)を準拠手段の1つとすることをIMOが許可したため、この懸念は部分的に緩和された。エンジンの機械的調整であるEPLは、スクラビングと呼ばれる排出削減技術を備えた、従来の高硫黄燃料油(HSFO)を使用する船舶で実行される可能性がある。スクラバーは2020年1月1日に発効したIMOの硫黄排出制限に準拠するための手段の1つとなっている(他の手段には、超低硫黄バンカー燃料とLNGの使用がある)。

船主と運航業者は、EPLを使用してEEXI目標を達成するか、あるいは「減速運航」として知られる、燃料費削減のために減速するという一般的慣行を採用することができる。2008年~2009年の世界的不況の間にコンテナ船運航業者Maerskによって導入された減速運航では、一般的な外航速度である20~24ノットから12~19ノットに船舶の速度を落とす。IMOの調査によると、2008年~2012年には減速運航船舶による排出削減は約13%だった。

しかし、減速運航のメリットをすでに使い切っている業者にとって、もう一段階の排出削減を実現し新たなCII目標を達成するのは難しい課題となるだろう。

Atkinsonは、炭素強度措置はEEXIよりも大きな影響を与えるだろうと警告する。「これらの目標達成に苦労する企業もあるかもしれない」とAtkinsonは述べている。

UCL Energy Instituteの准教授で海事系コンサルタントUMASのディレクターであるTristan Smith氏は、CIIについて同じ問題を強調する。「企業がどのような方法で準拠するかを推測するのは非常に困難だ。減速運航を採用するかもしれないが(そのコストは)高く、そのため採用が躊躇され、排出削減方法を探って別の部分への注目が増えることになる」と同氏は述べている。

CII目標の達成手段として、他の燃料節約装置、さらには帆も短期的に普及する可能性がある、とAtkinsonは言う。

EPLの使用はHSFOの需要を弱める可能性があると同時に、移行期間中もその使用を長続きさせる可能性がある。「EPLによって、高硫黄燃料油と超低硫黄燃料油の需要がさらに数年間、図らずも押し上げられてしまったかもしれない。廃棄候補だった船舶が、より経済的な船舶あるいは代替燃料船舶に置き換えられるまで、フリートで働く期間が長期化する可能性があるためだ」とAtkinsonは指摘する。

Smith氏は、化石燃料を使用しながらでも現在の炭素強度目標を達成できるという意見に同意する。「既存技術で11%を達成できるという提案を私は支持する。成熟した既存技術で、燃料の炭素強度を変えることなく、2030年までに31%の炭素強度改善を達成できると推定している」と同氏は言う。

しかし、IMOが計画通りに炭素強度目標を引き上げた場合、船主は最終的に現在の「従来型」燃料の選択肢を超えて、アンモニアをリストの先頭に置く可能性がある、とAustin氏は言う。「最も費用効果の高い深海燃料はアンモニアだというコンセンサスが構築され始めている」と同氏は述べている。

運航業者は、特により長い航海では、アンモニアについて海上での経験をほとんど持たない。同氏は、データが今後2年程度で浮上し、業界はアンモニアの可能性をよりよく理解できるようになる、と予測している。

ゼロカーボン技術に向けた歩みは遅く

MEPC 76計画がアンモニアのような真にゼロカーボンの船舶燃料に投資しなかったという批判は、海運業界それ自体からも出ている。

新計画を作成したIMO会合に代表者を派遣している国際バンカー産業協会(IBIA)は、IMOは「2つの異なる提案それぞれについて、低炭素代替燃料の研究への資金提供と化石燃料からの脱却(の奨励)という点で何の進展も示せなかった」と述べている。

MEPC 76の参加者は、低炭素技術およびゼロ炭素技術の社内研究開発の加速に向けて燃料油に2ドル/mtの義務的料金を課すという提案について協議したものの、決定は下さなかった。それ以上の議論は11月開催のMEPC 77まで中断された。

参加者は、バンカー燃料に対する100ドル/mt CO2相当の炭素税など、市場ベースのメカニズムについて最初の協議を実施した。また、この税の水準と資金の使用に関する疑問についても、その決定を次のMEPC会合に繰り越した。

Maerskは先週、メタノールで稼働する能力を備えたフィーダー船1隻を発注し、船舶燃料としてのグリーン水素への投資を継続すると述べたが、同社は市場ベースのメカニズム支持を強く押し出している。Maerskの規制問題担当ディレクターであるSimon Bergulf氏は、秋季の炭素価格に関する協議を奨励する内容をソーシャルメディアへの投稿に記している

会合参加者が新たなCI計画下での実施に同意した内容は、実際の燃料消費量、CO2排出量、航行距離に基づいて船舶を格付けし、この10年間の進行に伴ってその格付けを厳格化することである。改訂版EEXIは、すべての新造船と総トン数400トン超の既存船に適用される。

詳細内容は一部未着手のままで、会合参加者はその内容を11月会合の議題とした。未着手内容には、エネルギー効率技術の定義、基準船速決定のための航行中海上トライアルの活用、LNG船のボイルオフガスの検討が含まれている。

海運目標はいまだパリ協定に沿わず

業界内外では、パリ協定目標を達成するには海運目標は低すぎると指摘する者も見られる。

ノルウェーを拠点とする海運排出アドバイザーのSiglarは、IMOの2026年CI削減目標が11%であるにもかかわらず、そのわずか4年後にGHG40%削減を達成するための大きなギャップを埋める方法を特定していない、と指摘する。「EEXIとCIIの導入は有効な新措置だが、その目標はパリ協定目標の達成に大きく近づくには十分な意欲を欠いている」とSiglarの最高開発責任者であるGeir Olafsen氏はブログに記している。

とりわけCOVID-19パンデミックの景気後退から立ち直ろうとしている業界にとって、コストは明らかな懸念事項である。Austin氏は、ある調査では40%の削減目標を達成するには5,000億ドルの費用がかかることが明らかになっている、と言う。

EEXIに注目すると、国際クリーン交通委員会(ICCT)が11月に論文を発表しており、EPLは国際海運のCO2排出量の半分を占めるコンテナ船、石油タンカー、バルク貨物船の減速運航によるエネルギー効率向上を効果的に「体系化」しているが改善はしない、と指摘している。ICCTによると、こうした船舶はすでにEPLが求める以上に低速で運航しているという。

ICCTの海事プログラムリーダーであるBryan Comer氏は5月のブログ記事で、パリ協定準拠には年間6〜7% CIの炭素強度削減が必要になるが、これは計画で予想される年間約2%の削減をはるかに上回る、と記している。

海運業界の他の人々、特に海運協議会BIMCOの副事務総長であるLars Robert Pedersen氏は、IMOが船舶の炭素強度計算に使用する方法を批判している。たとえば、長距離を航行する船舶には報酬が与えられるが、貨物が満載でない可能性があることは考慮されていない。そのため、全体として航行数とCO2排出量が増えることもあり得る。

EUが政策を先導

IMOがグローバルルールに取り組む一方で、EUも独自計画で海運セクターの排出削減に向けて前進している。

Reed Smithロンドン事務所のパートナーであるAdam Hedley氏は、「EUの立法者はIMOと海運業界が市場ベースの措置を講じることに消極的だと不満を感じている」と述べている。「そして、ここまでに増えているのは…IMOに行動を起こさせるために、一方的な行動を取るというEUの脅迫姿勢だ」

規制改正案のリークに続き、 EUは7月14日に、世界最大の炭素取引市場であるEU域排出量取引制度(ETS)に海運を組み込むことを提案すると見られる。

ETSを拡大する提案では、EU海域内を運航する船舶に炭素排出量の支払いが義務付けられ、収益はよりクリーンな代替燃料のインフラ開発に向けられる。

EU海域を運航する大型船については、2018年1月からCO2排出量の監視、報告、検証が行われているとHedley氏は説明しているが、ETSに組み込むことで排出量制限を強化できるようになる。

航空排出量は2012年からETSに含まれており、Hedley氏はこれが海運の炭素排出量のモデルになる可能性があると述べている。航空同様、EUの都市間を往来する船舶からの排出をEUが規制する可能性はあるが、域外は対象外である(懐疑論者は、EUが必要な許容排出枠の82%をカバーする国際線の免除を認めていることを指摘している)。

しかし、ETSに海運を組み込むという考えは厳しい反対に直面しており、Hedley氏は「EUが2021年初頭に尋ねたところ…ETSへの海運の組み込みに賛成したのは回答者の約35%だけだった」と述べている。

世界的競争力を失うことへの業界の懸念を考慮し、Hedley氏は「おそらくこれは、業界レベルでは驚くに当たらない」と付け加えた。

計り知れない現実的課題

EUがETSに海運を組み込むか否かにかかわらず、また他の国々がそのスキームに従うかどうかにかかわらず、世界の国際貿易品の90%を輸送する海運業界がそのカーボンフットプリント削減を試みる際、規制遵守以上に多くの現実的課題に直面していることは明らかだ、とAustin氏は指摘する。

課題リストの先頭に来るのは、今日の化石燃料ベースのバンカー燃料に代わって船舶に動力を供給するのはアンモニアか他の燃料か、あるいはもっと言うなら市場にそこそこ浸透している、よりクリーンなLNGか、という問題である。

船舶にとって最も実用的であると考えられる燃料が何であれ、次の課題は、船舶がアクセスできる場所で十分な量の燃料を生産することだ、とAustin氏は言う。これには陸上ベースの生産とインフラへの巨額投資が必要になるだけでなく、「その大部分は海運業界が関与できる範囲を超えている」と同氏は指摘する。業界それ自体は燃料を生産するわけでもなく、生産企業にサイト許可を承認するわけでもないからだ。

Citigroupのグローバルロジスティクス/海運/オフショア担当チェアマンのMichael Parker氏は6月の会議で、業界全体の脱炭素化には2兆ドルの費用がかかるが、その85%は陸上ベースの燃料や燃料インフラ、港湾での排出削減に充てられる、と述べている。

こうした可用性の問題は、別の主要課題であるタイミングにつながる。2050年までに50%排出削減を達成するには、それに向けた新造船の建造契約は2040年代初頭までに結ばなければならず、その時点で船舶の購入者が必要な燃料へのアクセスが可能になると確信できていなければならない、とAustin氏は言う。

「繰り返しになるが、その大部分は海運業界の関与の範囲を超えている」とAustin氏は言い、船主と燃料提供業者の双方で必要な意思決定を推進するには、燃料義務と炭素価格の組み合わせが必要になると述べている。

--OPISのTom SosnowskiとBenita Dreesenによるレポートを含む

掲載日:2021年7月6日 執筆者:Cristina Brooks(IHS Markit 気候および持続可能性 シニアジャーナリスト)、 Kevin Adler(IHS Markit 気候および持続可能性グループ エディター)

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